健康診断で肝機能の異常や「脂肪肝の疑い」を指摘されると、脂肪肝検査とは何をするのか、どこまで調べればよいのか迷うことがあります。脂肪肝は血液検査だけでは確認できないため、画像検査との組み合わせが重要です。
脂肪肝検査の内容は、肝臓への脂肪蓄積を確認する検査と、肝障害や線維化(肝臓が傷ついて硬くなる変化)の程度を調べる検査に分かれます。検査結果を1項目だけで判断すると、進行リスクを十分に把握できないことがあります。
また、従来使われてきたNAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)という名称は、2026年時点ではMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)を中心とした分類へ変更されています。旧基準と現在の考え方を分けて理解することが大切です。
血液検査、腹部超音波検査、線維化評価の役割と、従来のNAFLD診断から現在のMASLD診断への変更点を整理すると、健診後に何を確認し、どの段階で精密検査を受けるべきかが分かります。
脂肪肝検査とは血液検査と画像検査を組み合わせて調べる検査
脂肪肝検査は1種類の検査名ではありません。血液検査で肝障害や代謝異常を確認し、腹部超音波検査などで肝臓への脂肪蓄積を調べ、必要に応じて線維化を評価するのが主な流れです。
| 検査 | 主に確認する内容 | 役割 |
|---|---|---|
| 問診・身体測定 | 飲酒量、服薬歴、体重変化、BMI、腹囲など | 脂肪肝の背景や原因を整理する |
| 血液検査 | AST、ALT、γ-GTP、血小板、血糖・脂質関連項目など | 肝細胞の傷みや代謝異常、線維化リスクを確認する |
| 腹部超音波検査 | 肝臓の脂肪化を示す超音波所見 | 肝臓への脂肪蓄積を画像で確認する |
| 線維化評価 | FIB-4 index、肝硬度測定など | 肝臓が硬くなる線維化の進行リスクを調べる |
| CT・MRI・肝生検 | 脂肪量、肝組織、他疾患の可能性など | 必要な場合に追加して詳しく評価する |
血液検査で肝細胞の傷みと代謝異常を確認する
血液検査では、ASTやALTなどの肝酵素を中心に、肝細胞が傷んでいないかを確認します。γ-GTPは飲酒などの影響を含む肝胆道系の異常をみる際に、血小板数は線維化リスクを評価する際などに参照されます。ただし、ASTやALTの数値だけで脂肪肝の有無を確定することはできません。
脂肪肝があっても肝酵素が大きく上昇しない場合があるため、採血結果が基準範囲内でも画像検査で脂肪化が確認されることがあります。反対に、ASTやALTが高い場合も、ウイルス性肝炎、薬剤による肝障害、アルコール関連肝疾患など別の原因が考えられます。
現在のMASLD診断では、血糖、血圧、中性脂肪、HDLコレステロールなどの心代謝系危険因子も確認します。これらの項目は脂肪肝の分類に必要ですが、各検査値の詳しい見方は脂肪肝検査とは別の検索意図になるため、個別の記事で確認してください。
腹部超音波検査で肝臓への脂肪蓄積を確認する
腹部超音波検査は、超音波を当てて肝臓の状態を画像で確認する検査です。脂肪肝では、肝臓全体が明るく見える高輝度肝(bright liver)や、肝臓と腎臓の明るさの差が目立つ肝腎コントラストなどが確認されます。
日本超音波医学会の「脂肪肝の超音波診断基準」では、Bモード検査に加え、超音波の減衰を利用して脂肪化を数値化する方法も示されています。一般的な健診や精査では腹部超音波検査が脂肪肝を拾い上げる重要な検査ですが、装置や体格などの影響も受けるため、結果はほかの検査と合わせて評価します。
検査では腹部にゼリーを塗り、プローブと呼ばれる器具を当てて観察します。放射線被ばくはありません。食事によって腹部臓器が見えにくくなることがあるため、絶食などの事前指示が出た場合は受診する施設の案内に従ってください。
線維化評価で肝臓の硬さと進行リスクを確認する
脂肪肝が確認された後は、脂肪の量だけでなく肝線維化がどの程度進んでいるかを確認することが重要です。線維化とは、肝臓が長期間傷つくことで線維成分が増え、肝臓が硬くなっていく変化を指します。
初期評価では、年齢、AST、ALT、血小板数から算出するFIB-4 indexが使われることがあります。FIB-4 indexは採血結果などから線維化リスクを推定する指標であり、数値だけで肝硬変を確定する検査ではありません。年齢などの影響も受けるため、医療機関で総合的に評価します。
線維化の疑いがある場合は、超音波を用いて肝臓の硬さを測るエラストグラフィや、MRIを利用する検査などが追加されることがあります。肝生検(針で肝組織の一部を採取して顕微鏡で調べる検査)は、すべての脂肪肝で行うわけではなく、病態の確定が必要な場合などに検討されます。
脂肪肝検査の内容は問診から線維化評価まで段階的に進む
脂肪肝が疑われた場合は、問診だけ、採血だけで結論を出すのではなく、原因の確認、脂肪化の確認、線維化リスクの評価へと段階的に進みます。必要な検査は健診結果や既往歴によって異なります。
問診では飲酒量と服薬歴と体重変化を確認する
最初に確認されるのは、飲酒量、服用している薬、過去の病気、体重の増減などです。脂肪肝には代謝異常と関係するものだけでなく、飲酒、薬剤、特定の病気などが関係する場合があるため、画像で脂肪肝が見つかった後に原因を整理する工程が必要です。
飲酒量は「飲む・飲まない」だけではなく、酒の種類、1回量、飲む頻度まで伝えると純アルコール量を把握しやすくなります。従来のNAFLDは飲酒量が一定量未満であることを条件にしていましたが、現在はMASLD、MetALD、ALDなど飲酒量と代謝異常を踏まえた分類へ移行しています。
服薬歴やサプリメントの利用も伝えてください。肝機能異常が脂肪肝だけによるものとは限らないためです。健診結果を持参できる場合は、今回の数値だけでなく過去の推移も確認できるようにすると、医師が持続的な異常か一時的な変化かを整理しやすくなります。
採血と腹部超音波検査で脂肪肝の有無と背景を整理する
問診の後は、血液検査で肝障害や代謝異常の有無を確認し、腹部超音波検査で肝臓への脂肪蓄積を調べる流れが一般的です。血液検査は肝臓の傷みや背景をみる検査、超音波検査は脂肪化を画像で確認する検査と役割を分けると理解しやすくなります。
健診の採血でASTやALTが高くても、それだけで脂肪肝と診断されるわけではありません。腹部超音波検査で脂肪肝の所見があれば、飲酒量、血糖、血圧、脂質、BMIなどを合わせ、脂肪性肝疾患のどの分類が考えられるかを整理します。
腹部超音波検査で脂肪化が明確でない場合でも、肝機能異常が続いている場合やほかの肝疾患が疑われる場合は追加検査が必要になることがあります。検査結果を自己判断で「脂肪肝だから問題ない」と決めず、再検査や精密検査の指示がある場合は内容を確認しましょう。
追加検査は線維化リスクや他の肝疾患の可能性で決まる
脂肪肝が確認された全員にCT、MRI、肝生検まで行うわけではありません。まず非侵襲的な検査で線維化リスクを評価し、リスクが高い場合や診断がはっきりしない場合に追加検査を検討するのが一般的です。
たとえばFIB-4 indexや肝硬度測定で線維化が疑われる場合は、より詳しい画像検査や専門医による評価へ進むことがあります。また、B型・C型肝炎などのウイルス性肝疾患、自己免疫性肝疾患、薬剤性肝障害などが疑われる場合は、それぞれに必要な血液検査が追加されます。
追加検査の種類は、年齢、肝機能、血小板数、超音波所見、既往歴などで変わります。健診の判定が「要精密検査」になった場合は、消化器内科や肝臓内科などで、脂肪化の有無だけではなく線維化と原因まで確認することが重要です。
NAFLD診断は脂肪化と飲酒量などを確認する旧来の診断基準
「NAFLD 診断」で検索する場合は、NAFLDが現在の名称ではなく従来使われてきた診断概念である点を押さえておきましょう。2026年時点ではNAFLD/NASH診療ガイドラインはMASLD診療ガイドラインへ改訂されています。
従来のNAFLD診断では肝細胞5%以上の脂肪蓄積を確認する
2020年版のNAFLD/NASH診療ガイドラインでは、NAFLDは画像または組織学的に肝臓への脂肪蓄積を認め、アルコール、薬剤、遺伝子疾患などによる二次性脂肪肝を除外する考え方で整理されていました。組織学的には肝細胞の5%以上に脂肪蓄積を認めることが定義に含まれています。
従来のNAFLDで「非アルコール性」と判断する飲酒量の上限は、純アルコール換算で男性30g/日未満、女性20g/日未満とされていました。つまり、NAFLDは「まったく飲酒しない人だけの脂肪肝」という意味ではありません。
ただし、このNAFLDの基準は旧来のものです。現在の診療では病名と分類法が変更されているため、過去の健診結果や資料に「NAFLD」「NASH」と書かれていても、2026年時点の情報を調べる際はMASLD、MASHという名称も合わせて確認してください。
NAFLとNASHの区別には炎症と肝細胞傷害の評価が必要だった
従来のNAFLDは、組織学的にNAFL(非アルコール性脂肪肝)とNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に分けられていました。NAFLは脂肪蓄積があっても肝細胞の風船様変性がない状態、NASHは脂肪蓄積に肝細胞傷害や炎症を伴う状態として整理されていました。
NASHを確実に区別するには肝組織の評価が必要ですが、肝生検は体に負担があるため、脂肪肝のある人全員に行う検査ではありません。現在は血液検査やFIB-4 index、エラストグラフィなどを使い、まず線維化が進んでいる可能性を非侵襲的に評価する考え方が重視されています。
名称変更後はNASHに対応する名称としてMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)が使われます。検査を受ける際は「脂肪があるか」だけでなく、「炎症や線維化が疑われるか」「さらに詳しい検査が必要か」まで確認すると、その後の受診方針を整理できます。
2026年はNAFLDからMASLDへ名称と診断軸が変更されている
日本消化器病学会と日本肝臓学会は、脂肪性肝疾患の新しい病名と分類法を採用しています。MASLDは、脂肪性肝疾患があり、5つの心代謝系危険因子のうち少なくとも1つを満たす場合に該当する考え方です。2026年4月には「MASLD診療ガイドライン2026(改訂第3版)」が公開されました。
| 心代謝系危険因子 | 2026年に日本で用いる基準 |
|---|---|
| 肥満 | BMI 23kg/m²以上、または腹囲が男性94cm超・女性80cm超 |
| 血糖 | 空腹時血糖100mg/dL以上、食後2時間血糖140mg/dL以上、HbA1c 5.7%以上、2型糖尿病、またはその治療のいずれか |
| 血圧 | 収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上、または降圧薬の内服 |
| 中性脂肪 | 150mg/dL以上、または脂質異常症治療薬の内服 |
| HDLコレステロール | 男性40mg/dL以下、女性50mg/dL以下、または脂質異常症治療薬の内服 |
この心代謝系基準は、日本のメタボリックシンドロームの診断基準と同じではありません。また、飲酒量によってはMASLDだけでなくMetALD(代謝機能障害アルコール関連肝疾患)など別の分類に該当します。検索結果で古いNAFLD基準と新しいMASLD基準を混同しないようにしてください。
健診で脂肪肝を指摘された後は線維化リスクまで確認する
健診で「脂肪肝」「肝機能異常」「要精密検査」と指摘された場合は、脂肪があるという事実だけで終わらせず、線維化の可能性と脂肪肝の背景を確認することが重要です。
肝機能の数値が高くなくても画像所見があれば経過を確認する
ASTやALTが大きく上昇していなくても、腹部超音波検査で脂肪肝が確認されることがあります。そのため、「採血が大きく異常ではないから脂肪肝も問題ない」とは判断できません。画像所見、肝酵素、血小板、代謝異常などを合わせて確認する必要があります。
特に重要なのは、肝臓の脂肪量そのものだけではなく線維化の程度です。日本超音波医学会の診断基準でも、脂肪肝の予後を考えるうえで線維化の評価が重要とされています。健診で脂肪肝を指摘された場合は、判定欄に再検査や精密検査の指示がないか確認してください。
過去にも同じ指摘がある場合は、前年までの結果を持参すると変化を確認しやすくなります。肝機能値、血小板、体重、血糖・脂質関連項目などがどう推移しているかを医師に確認し、必要な再検査の時期を決めましょう。
健診でALTが30を超えた場合は一度かかりつけ医等を受診する
日本肝臓学会の「奈良宣言2023」では、一般的な健康診断で測定されるALTが30を超えた場合、まずかかりつけ医等を受診することを勧めています。採血や腹部超音波検査を行い、必要に応じて消化器内科で詳しく調べる流れが示されています。
ALT 30という数値は「30を超えたら脂肪肝と診断される」という意味ではありません。ALTが高くなる原因には、脂肪性肝疾患だけでなくウイルス性肝炎、飲酒、薬剤など複数の肝疾患・要因があります。受診して原因を確認するための目安として理解してください。
健診結果にALTの上昇や要再検査・要精密検査の判定がある場合は、症状がなくても放置しないことが大切です。健診票と過去の検査結果、使用中の薬やサプリメントが分かるものを持参し、追加の血液検査や腹部超音波検査が必要か確認しましょう。
線維化リスクが高い場合は消化器内科や肝臓内科で精査する
FIB-4 indexや肝硬度測定などで線維化リスクが高いと評価された場合は、消化器内科や肝臓内科などで詳しい検査を受けます。専門診療では、脂肪化だけでなく線維化の程度、ほかの肝疾患の有無、飲酒や代謝異常との関係を整理します。
また、肝酵素の異常が持続している場合、血小板が減少している場合、画像で肝臓の形態変化が疑われる場合なども、医師の判断で追加評価が必要になることがあります。追加検査として超音波エラストグラフィ、MRI、肝炎ウイルスなどの血液検査が行われることがあります。
検査の目的は「脂肪肝かどうか」だけを確かめることではありません。進行した線維化を見逃さず、原因に応じた管理につなげることです。健診で要精密検査と判定された場合は、症状がなくても受診を先延ばしにしないようにしましょう。
脂肪肝検査は脂肪の有無と線維化リスクを段階的に確認する
脂肪肝検査では、血液検査だけで診断を完結させず、腹部超音波検査などで脂肪化を確認し、必要に応じてFIB-4 indexや肝硬度測定などで線維化リスクを評価します。健診で異常を指摘された場合は、検査ごとの役割を分けて考えることが重要です。
「NAFLD 診断」という言葉は現在も検索されていますが、2026年時点ではNAFLD/NASHからMASLD/MASHを中心とした名称と分類へ移行しています。古い検査結果を読み返す場合はNAFLDの旧基準を理解しつつ、現在の診断では心代謝系危険因子や飲酒量を含めて評価される点も確認してください。
・血液検査だけでは脂肪肝の有無を確定できない
・腹部超音波検査は肝臓への脂肪蓄積を確認する代表的な検査
・脂肪肝が見つかった後は肝線維化の評価が重要
・NAFLDは旧来の名称で、2026年時点ではMASLDを中心とした分類へ変更されている
・健診で要精密検査とされた場合は、消化器内科や肝臓内科などで原因と線維化リスクまで確認する










