健康診断で腹囲が基準値を超え、「メタボリックシンドロームではないか」と不安になることがあります。ただし、メタボリックシンドロームとは単にお腹まわりが大きい状態を指す言葉ではありません。
日本の診断基準では、男性85cm以上・女性90cm以上の腹囲に加え、血圧・血糖・脂質の3項目のうち2項目以上が基準に該当することが条件です。腹囲だけを見て自分でメタボと決めると、検査結果を正しく捉えられない可能性があります。
診断基準や腹囲の測り方に加え、女性の腹囲平均と90cmという基準値の違い、特定保健指導との違いまで整理します。健診結果のどこを確認し、次に何をすべきかが分かります。
メタボリックシンドロームとは内臓脂肪に複数のリスクが重なった状態
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積に血圧・血糖・脂質の異常が重なった状態です。腹囲が大きいことだけを意味する言葉ではありません。
腹囲が大きいだけではメタボリックシンドロームには該当しない
メタボリックシンドロームは「太っている人」や「お腹が出ている人」と同じ意味ではありません。日本では、内臓脂肪の蓄積を示す腹囲を必須項目とし、さらに血圧・血糖・脂質の異常が複数重なっているかを確認します。
たとえば男性の腹囲が90cmでも、血圧・血糖・脂質の3項目が診断基準に該当していなければ、腹囲だけを理由にメタボリックシンドロームとは診断されません。反対に、腹囲と複数の代謝異常が重なっているかを確認することが重要です。
内臓脂肪型肥満と高血圧・高血糖・脂質代謝異常が重なると、動脈硬化が進みやすくなり、心臓病や脳卒中などにつながるリスクが高まります。そのため、健診では腹囲の数字だけでなく、血液検査や血圧測定の結果を組み合わせて確認します。
体脂肪率やBMIとは見ている内容が異なる
体脂肪率は体重に占める脂肪の割合、BMI(体格指数)は身長と体重から計算する肥満度の指標です。一方、メタボリックシンドロームでは内臓脂肪の蓄積と代謝異常の重なりを確認するため、BMIや体脂肪率だけでは判定しません。
そのため、BMIが25未満でも、腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上で、血圧・血糖・脂質のうち2項目以上が診断基準に該当すれば、メタボリックシンドロームの条件を満たします。BMIと腹囲は役割が異なる数値として確認しましょう。
体脂肪率や体組成計、内臓脂肪CT検査で何を調べるのかについては、検査方法そのものを扱った記事で確認できます。
血圧・血糖・脂質のリスクが重なる点に注意する
メタボリックシンドロームで重視されるのは、複数の危険因子が同時に存在することです。高血圧、高血糖、脂質代謝異常などは、それぞれ単独でも動脈硬化と関係しますが、内臓脂肪の蓄積と重なると健康上のリスクがさらに高まります。
厚生労働省の情報でも、危険因子はそれぞれ単独で動脈硬化を進行させるだけでなく、複数重なることで心臓病や脳卒中の危険が高まると説明されています。「腹囲が何cmか」だけでなく「ほかの異常がいくつ重なっているか」まで見る必要があります。
なお、高血圧や糖尿病、脂質異常症そのものの診断基準と、メタボリックシンドロームの判定に使う数値は目的が異なります。個別の検査結果については、それぞれの検査項目の基準を確認してください。
メタボリックシンドロームの診断基準は腹囲と3つの追加項目で判定する
日本では、男性85cm以上・女性90cm以上の腹囲を必須条件とし、脂質・血圧・血糖の3項目のうち2項目以上に該当するとメタボリックシンドロームと判定します。
| 区分 | 診断基準 | 判定での扱い |
|---|---|---|
| 腹囲 | 男性85cm以上 女性90cm以上 |
必須項目 |
| 脂質 | 中性脂肪150mg/dL以上 かつ/または HDLコレステロール40mg/dL未満 |
3項目のうち2項目以上 |
| 血圧 | 収縮期血圧130mmHg以上 かつ/または 拡張期血圧85mmHg以上 |
|
| 血糖 | 空腹時血糖110mg/dL以上 |
腹囲は男性85cm以上・女性90cm以上が必須条件になる
日本の診断基準では、ウエスト周囲径(おへその高さで測る腹囲)が男性85cm以上、女性90cm以上であることが最初の条件です。この数値は、男女とも腹部CTで測定した内臓脂肪面積100cm²以上に相当する目安として設定されています。
たとえば男性で腹囲84cmの場合、血圧・血糖・脂質がメタボリックシンドロームの数値基準に複数該当していても、日本のメタボリックシンドローム診断基準そのものには該当しません。ただし、個々の検査値の異常を放置してよいという意味ではありません。
腹囲は内臓脂肪の蓄積を簡便に推定するために使われます。内臓脂肪量を詳しく調べる方法としてCT検査もありますが、体脂肪や内臓脂肪の検査方法を詳しく知りたい場合は、体脂肪率検査の記事を確認してください。
脂質・血圧・血糖のうち2項目以上に該当することが条件になる
腹囲の条件を満たしたうえで、脂質・血圧・血糖のうち2項目以上が診断基準に該当するとメタボリックシンドロームです。1項目だけ高い場合と、2項目以上が重なった場合を分けて考える必要があります。
脂質では中性脂肪150mg/dL以上またはHDLコレステロール40mg/dL未満、血圧では収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上、血糖では空腹時血糖110mg/dL以上が判定に用いられます。
それぞれの数値は「高血圧症」「糖尿病」「脂質異常症」そのものを診断するための基準と同一とは限りません。健康診断で数値を指摘された場合は、メタボ判定だけでなく、該当する検査項目について個別に結果を確認することが大切です。
服薬中の場合も該当項目として扱われる
高トリグリセライド血症・低HDLコレステロール血症、高血圧、糖尿病について薬物治療を受けている場合は、メタボリックシンドロームの診断では該当する項目に含めて判定します。薬で数値が下がっているから対象外になるわけではありません。
また、脂質の項目で使われるのは中性脂肪とHDLコレステロールです。健康診断でよく目にするLDLコレステロールは、メタボリックシンドロームの診断項目には含まれていません。ただし、LDLコレステロール高値による健康上のリスクがなくなるわけではありません。
服薬中の人は、健診当日の数値だけを見て自己判断せず、治療状況を含めて医師の評価を受けてください。健診結果を確認するときは、現在使用している薬や治療中の病気も合わせて伝える必要があります。
腹囲の基準値はおへその高さで測った値を使う
メタボリックシンドロームの腹囲は、衣服のウエストサイズではなく、立った状態でおへその高さを水平に測った周囲径を使用します。測定位置がずれると数値も変わります。
立った状態で軽く息を吐きおへその高さを測定する
腹囲は立った状態で測ります。厚生労働省が示す診断基準では、立位・軽呼気時・おへその高さで測定する方法が示されています。軽呼気時とは、無理にお腹をへこませず、軽く息を吐いた状態です。
メジャーは床と水平になるように腹部へ一周させ、強く締め付けないようにします。お腹に力を入れたり、大きく息を吸ったりすると腹囲が変わるため、普段に近い姿勢で測ることが大切です。
脂肪が多く、おへその位置が下方へ大きくずれている場合は、医療機関では肋骨の下端と骨盤上部の中間の高さを使う場合があります。健康診断では測定担当者の指示に従い、毎回できるだけ同じ条件で測定すると変化を比較しやすくなります。
洋服のウエストサイズと健康診断の腹囲は一致しないことがある
健康診断で測る腹囲と、ズボンやスカートに表示されているウエストサイズは同じ数値になるとは限りません。衣服は商品ごとに測定方法や余裕の持たせ方が異なる一方、健診の腹囲はおへその高さを一定の方法で測定します。
そのため、「普段はウエスト70cmの服を着ているから腹囲も70cm程度」とは判断できません。反対に、衣服のサイズが大きくなっただけで、メタボリックシンドロームに該当したと決めることもできません。
自宅で変化を追う場合も、おへその高さ、姿勢、呼吸の状態をそろえて測りましょう。ただし、自宅での腹囲測定は健康状態の変化に気づくためには使えますが、血圧や血液検査を伴わないため、それだけでメタボリックシンドロームを判定することはできません。
腹囲を1回測っただけではメタボリックシンドロームを判定できない
腹囲が男性85cm以上または女性90cm以上だったとしても、必要なのは次に血圧・血糖・脂質を確認することです。腹囲は診断条件の一部であり、単独の検査ではありません。
また、測定位置や姿勢によって数cm程度の差が生じる可能性があります。自宅で基準値付近だった場合は、数字を細かく上下させて自己判定するより、健康診断などで適切に腹囲を測定し、血圧や血液検査と一緒に確認してください。
腹囲が基準未満でも、血圧・血糖・脂質に異常があれば、それぞれの健康リスクへの対応は必要です。「メタボではないから問題ない」と考えず、健診結果に要受診や要精密検査などの指示がある場合は、その指示に従いましょう。
女性の腹囲は平均値ではなく90cmの基準値との違いを確認する
女性の腹囲を確認するときは、「平均」と「メタボリックシンドロームの基準値」を分けて考える必要があります。女性90cmという数値は平均腹囲ではなく、診断に使用する腹囲の基準です。
女性90cmは平均腹囲ではなくメタボ判定に使う数値
女性の腹囲について「平均は何cmか」を調べる人もいますが、女性90cmは日本人女性の平均腹囲を示した数字ではありません。内臓脂肪面積100cm²以上に相当する腹囲として、メタボリックシンドロームの診断基準に設定された数値です。
平均値は、調査対象者の年齢構成や体格によって変化します。一方、診断基準は「同年代の女性より太いか細いか」を比較するための数字ではなく、内臓脂肪の蓄積と複数の代謝異常が重なっている人を確認するために使われます。
そのため、自分の腹囲が女性全体の平均より小さいとしても、それだけで健康上のリスクが低いとは判断できません。反対に平均より大きい場合も、それだけでメタボリックシンドロームと決まるわけではなく、血圧・血糖・脂質まで確認します。
令和6年調査では女性20歳以上の18.6%が腹囲90cm以上
厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査では、女性20歳以上の腹囲を5cm刻みなどの区分で集計しています。女性全体では腹囲90cm未満が81.4%、90cm以上が18.6%でした。
この統計は女性の腹囲を1つの「平均値」で示すのではなく、どの腹囲区分に何%の人がいるかを示しています。メタボリックシンドロームとの関係を考える場合、平均腹囲だけを探すより、自分が90cmの診断基準に該当するかを確認する方が目的に合っています。
| 女性の年齢 | 腹囲90cm未満 | 腹囲90cm以上 |
|---|---|---|
| 20~29歳 | 95.1% | 4.9% |
| 30~39歳 | 91.4% | 8.6% |
| 40~49歳 | 87.8% | 12.2% |
| 50~59歳 | 83.9% | 16.1% |
| 60~69歳 | 80.1% | 19.9% |
| 70歳以上 | 72.4% | 27.6% |
| 20歳以上全体 | 81.4% | 18.6% |
※令和6年国民健康・栄養調査の全国補正値。腹囲を測定した20歳以上の女性を対象とし、妊婦11名を除外しています。
腹囲90cm未満でも血圧・血糖・脂質の異常は別に確認する
女性で腹囲が90cm未満なら、日本のメタボリックシンドローム診断基準の必須条件には該当しません。しかし、90cm未満なら生活習慣病のリスクがないという意味ではありません。
高血圧、糖尿病、脂質異常症などは、メタボリックシンドロームとは別に診断・治療の対象になる病気です。腹囲が基準未満でも、健診結果で血圧・血糖・脂質の異常を指摘された場合は、それぞれの検査結果に応じて対応する必要があります。
また、40~74歳を対象とする特定保健指導では、腹囲が男性85cm・女性90cm未満でもBMI25以上で一定のリスクがある人が対象になる場合があります。「腹囲90cm未満だから健診結果を気にしなくてよい」と判断しないことが大切です。
メタボ診断と特定保健指導の対象判定は同じではない
健康診断で混同しやすいのが、メタボリックシンドロームの診断基準と特定保健指導の対象基準です。腹囲の数値は共通しますが、目的と判定方法には違いがあります。
メタボリックシンドロームは病態の診断基準を示している
メタボリックシンドロームの診断では、内臓脂肪の蓄積を示す腹囲と、脂質・血圧・血糖の重なりを確認します。腹囲が男性85cm以上または女性90cm以上で、追加3項目のうち2項目以上が該当することが条件です。
一方、特定健康診査(特定健診)・特定保健指導は、40~74歳の医療保険加入者を対象として、生活習慣病の発症リスクが高い人を把握し、生活習慣の改善を支援する制度です。病態の診断と保健指導の対象者選定は目的が異なります。
健診結果に「メタボ非該当」と表示されていても、別の欄で保健指導や医療機関の受診を案内されることがあります。結果表では「メタボ判定」だけを見るのではなく、各検査値と健診機関からの指示まで確認してください。
腹囲が基準未満でもBMI25以上なら特定保健指導の対象候補になる
特定保健指導では、男性85cm・女性90cm以上の人だけが対象になるわけではありません。厚生労働省の基準では、腹囲が基準未満でもBMI25以上で、血圧・脂質・血糖の一定のリスクに該当する人も対象に含まれます。
この違いがあるため、「メタボリックシンドロームではない=特定保健指導も受けない」とは限りません。腹囲とBMIの両方が健診で測定される理由の1つは、このように対象者を段階的に確認するためです。
BMIは身長と体重から算出するため、内臓脂肪の量そのものを示す数字ではありません。BMI25という数字の意味や計算方法を詳しく知りたい場合は、BMIの記事で確認できます。
薬を服用している人は特定保健指導で扱いが変わる
メタボリックシンドロームの診断では、高血圧・脂質異常・糖尿病について薬物治療中の場合も、それぞれの項目に含めます。一方、特定保健指導では、高血圧症・脂質異常症・糖尿病の治療薬を服用している人は対象者から除外されます。
これは「薬を飲んでいれば生活習慣を気にしなくてよい」という意味ではありません。すでに医療機関で治療・管理を受けている人については、特定保健指導ではなく医療としての管理が行われているため、制度上の扱いが異なります。
服薬中の人が健康診断を受ける場合は、薬の名称や治療している病気を正確に伝えましょう。健診結果を見て自分の判断で薬を減らしたり中止したりせず、治療方針については処方した医師へ確認してください。
健診で基準値を超えたら腹囲だけでなく検査結果全体を確認する
腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上だった場合は、まず脂質・血圧・血糖の3項目を確認します。2項目以上が基準に該当している場合はメタボリックシンドロームの条件を満たすため、健診結果に示された受診や保健指導の案内に従ってください。
腹囲だけが基準を超えている場合でも、食事・身体活動・飲酒・喫煙などの生活習慣を振り返る機会にはなります。ただし、短期間で腹囲だけを減らそうとして極端な食事制限を行うのではなく、継続できる生活習慣の改善を考えましょう。
生活習慣病の健診でどのような項目を確認するのかは、生活習慣病検査の記事で詳しく解説しています。
血圧・血糖・脂質について「要受診」「要精密検査」などの判定がある場合や、すでに高血圧症・糖尿病・脂質異常症の治療を受けている場合は、腹囲の数値だけで対応を決めず医師へ確認してください。
腹囲と血圧・血糖・脂質を組み合わせてメタボリックシンドロームを確認する
メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積に血圧・血糖・脂質の異常が複数重なった状態です。日本では男性85cm以上・女性90cm以上の腹囲を必須条件とし、追加3項目のうち2項目以上に該当するかを確認します。
女性90cmという腹囲の基準値は平均値ではありません。令和6年国民健康・栄養調査では20歳以上の女性の18.6%が90cm以上でしたが、平均より大きいか小さいかではなく、腹囲と各検査値を組み合わせて健康状態を確認することが大切です。
健診結果ではメタボ判定だけでなく、血圧・血糖・脂質の個別判定や、要受診・要精密検査などの指示まで確認しましょう。治療中の場合は自己判断で薬を変更せず、健診結果を主治医へ共有してください。









