健康診断の血圧が高いと指摘され、「130/85mmHgを超えたら高血圧なのか」「140/90mmHgとの違いは何か」と戸惑う方もいるでしょう。血圧測定では、同じ数値でも健診の保健指導、医療機関での診断、家庭血圧で意味が異なります。
数値の役割を混同すると、本来は経過を確認すべき段階で必要以上に不安になったり、反対に受診が必要な値を「年齢のせい」と考えて見過ごしたりするおそれがあります。健康診断で血圧が高いときは、結果票の区分と測定条件を分けて確認することが大切です。
この記事では、血圧測定の基準値として目にする130/85mmHgと140/90mmHgの違い、家庭血圧の確認方法、血圧の正常値を年代別にどう考えるかを整理します。健診後に何を確認し、どの段階で医療機関へつなげるかまで把握できます。
健康診断の血圧は130/85と140/90で意味が異なる
健康診断の血圧を見るときは、「正常血圧」「保健指導判定値」「受診勧奨判定値」を同じ基準として扱わないことが重要です。数字が近いため混同しやすいですが、それぞれ目的が異なります。
| 確認する区分 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 正常血圧 | 120mmHg未満 | 80mmHg未満 | 日本高血圧学会が健康な人の正常血圧として示す診察室血圧 |
| 健診の保健指導判定値 | 130mmHg以上 | 85mmHg以上 | 厚生労働省の標準的な健診・保健指導プログラムで、生活習慣の見直しや保健指導につなげる値 |
| 健診の受診勧奨判定値 | 140mmHg以上 | 90mmHg以上 | 医療機関での確認を考える値で、診察室血圧の高血圧診断基準にも当たる |
| 速やかな受診を促す値 | 160mmHg以上 | 100mmHg以上 | 厚生労働省の健診後フィードバック例で「すぐに医療機関の受診を」とされる範囲 |
※収縮期血圧または拡張期血圧のどちらか一方が該当すれば、その高い方の区分を確認します。健診機関の判定記号や案内文も併せて確認してください。
上の血圧と下の血圧はどちらか一方が高くても確認が必要
血圧は「上」と「下」の2つの数値で表示されます。上は収縮期血圧(心臓が収縮して血液を送り出すときの圧力)、下は拡張期血圧(心臓が広がって血液をためるときの圧力)です。健康診断では、どちらか一方だけが基準を超えた場合も、その値を確認します。
たとえば「128/92mmHg」なら上の血圧は130mmHg未満ですが、下の血圧が90mmHg以上です。一方、「145/78mmHg」なら下の血圧は80mmHg未満でも、上の血圧が140mmHg以上に当たります。「両方が高くなければ問題ない」とは考えないようにしましょう。
結果票を見るときは、上の血圧だけを追うのではなく、2つの数値を別々に確認します。特に前年の健診結果が残っている場合は、1回の判定だけでなく、同じ側の数値が複数年にわたって上がっていないかも見ておくと変化を把握しやすくなります。
130/85mmHg以上は健診で保健指導につなげる判定値
厚生労働省の「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」では、収縮期血圧130mmHg以上または拡張期血圧85mmHg以上を保健指導判定値を超えるレベルとして扱います。ここは、健康診断の血圧で「130/85」という数字を見かける主な理由です。
ただし、130/85mmHgを超えたからといって、その1回の測定だけで高血圧と確定するわけではありません。この値は、健診後に生活習慣を振り返ったり、必要に応じて保健指導につなげたりするための区切りです。高血圧の診断基準である140/90mmHgとは役割が異なります。
「130台だから高血圧」「85を超えたからすぐ治療が必要」と数値だけで決めず、結果票に記載された判定区分を確認しましょう。肥満の有無やほかの健診項目によって保健指導の対象になる条件も変わるため、健診全体の結果と合わせて受け止める必要があります。
140/90mmHg以上は受診勧奨の区切りで高血圧の診断基準にも当たる
収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上は、厚生労働省の健診プログラムでは受診勧奨判定値を超えるレベルです。また、日本の高血圧の診断でも、診察室血圧140/90mmHg以上が高血圧の基準として用いられます。
ただし、健康診断で1回140/90mmHg以上だったという事実だけで、自己判断で「高血圧と確定した」と考えるのは適切ではありません。血圧は緊張や測定環境によって変動するため、医療機関では繰り返しの診察室血圧や家庭血圧などを確認して判断します。
健診結果に受診を勧める記載がある場合は、その案内に沿って医療機関へ相談しましょう。特に160/100mmHg以上は、厚生労働省の健診後フィードバック例で速やかな受診を促す範囲です。「自覚症状がないから大丈夫」と結果を保留にしないことが大切です。
健康診断で血圧が高いときは測定条件と家庭血圧を確認する
健康診断で血圧が高くても、健診会場での1回の値と普段の血圧が同じとは限りません。健診値をきっかけに、家庭で同じ条件の測定を続けて普段の血圧を確認すると、次に医療機関へ伝える情報を整理できます。
健診や医療機関だけで高くなる白衣高血圧がある
医療機関や健康診断の会場では血圧が高い一方、家庭では基準を超えない状態を「白衣高血圧」と呼びます。診察室という環境への緊張などで一時的に血圧が上がることがあり、健診で高かった値と家庭での値が一致しないケースはあります。
そのため、「健診で高かったから必ず高血圧」「家では低いから健診結果は無視してよい」のどちらにも決めつけないことが大切です。反対に、診察室では高くないのに家庭や日常生活で高くなる「仮面高血圧」もあるため、健診値だけでは普段の状態を捉えきれない場合があります。
自宅に血圧計がある場合は、健診後の数日だけ都合のよい値を選ぶのではなく、朝と夜など同じ条件で継続して記録しましょう。医療機関へ相談するときに家庭血圧の記録を持参すると、健診会場だけで高かったのか、普段から高いのかを確認する助けになります。
家庭血圧は朝と夜に同じ条件で測って記録する
家庭血圧は、測る時間や姿勢が毎回ばらばらだと比較しにくくなります。日本高血圧学会では家庭血圧の測定を重視しており、朝と夜に、できるだけ同じ条件で測定を続けることが大切です。測定前は座って安静にし、会話をしながら測るのは避けましょう。
朝は起床後1時間以内を目安に、排尿後、朝食や降圧薬の服用前に測ります。夜は就寝前に測り、測定値と日時を記録します。上腕に巻くタイプの血圧計では、カフ(腕に巻く帯)が心臓の高さになるようにし、背もたれのある椅子で足を組まずに座ります。
家庭血圧では、診察室血圧より低い基準が用いられます。一般に家庭血圧135/85mmHg以上は高血圧の診断で用いる値です。健診で140/90mmHg以上だった場合でも、家庭血圧を自分だけで診断に使うのではなく、記録を医師へ見せて確認しましょう。
160/100mmHg以上なら健診後の受診を先延ばしにしない
厚生労働省の健診後フィードバック例では、収縮期血圧160mmHg以上または拡張期血圧100mmHg以上について「すぐに医療機関の受診を」と案内しています。健康診断でこの範囲だった場合は、次の健診まで様子を見るのではなく、結果票を確認して受診につなげましょう。
140〜159/90〜99mmHgの範囲も受診勧奨判定値を超えています。厚生労働省の資料では生活習慣の改善と、その後も改善しない場合の受診が示されていますが、健診結果票に受診指示がある場合や、家庭でも高い値が続く場合は指示に従って医療機関へ相談してください。
すでに高血圧で通院中の方は、健診値だけを見て薬を増減したり中止したりしないでください。服薬状況や家庭血圧によって目標値の設定は変わるため、健診結果票と家庭での記録を主治医へ提示し、今後の測定や治療について確認します。
血圧の正常値は年代別に変わるわけではない
「50代なら血圧は少し高くても正常」「70代は若い人より基準が高い」と考える方もいますが、年代ごとに別の正常血圧を設定する考え方ではありません。年代別の平均値と、医学的な正常血圧の区分は分けて確認しましょう。
| 年代 | 診察室での正常血圧 |
|---|---|
| 20代 | 収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満 |
| 30代 | 収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満 |
| 40代 | 収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満 |
| 50代 | 収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満 |
| 60代 | 収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満 |
| 70代以上 | 収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満 |
※上表は健康な人の「正常血圧」の区分を年代別に並べたものです。高血圧の治療目標は、年齢だけでなく病状や体調などを踏まえて医師が個別に調整します。
20代から70代以上まで正常血圧の区分は120/80mmHg未満
日本高血圧学会の一般向け情報では、健康な人の正常血圧は診察室で収縮期120mmHg未満かつ拡張期80mmHg未満とされています。「年代別に正常値の上限が上がる」という基準ではありません。20代でも70代以上でも、正常血圧という区分そのものは同じです。
ここで注意したいのは、120/80mmHg未満と、健康診断で使われる130/85mmHgという数字の違いです。前者は正常血圧の区分、後者は厚生労働省の健診で保健指導につなげる判定値です。120台/70台だから「健診では問題ない」といった単純な読み替えはしないでください。
年代別の血圧を調べるときは、まず「平均値を知りたいのか」「正常とされる区分を知りたいのか」を分けましょう。健康診断の結果を読む目的なら、自分の年代の平均値に近いかではなく、結果票の判定値と正常血圧の区分の両方を確認する方が誤解を減らせます。
年代別の平均血圧が高くても正常範囲が広がるわけではない
血圧は加齢に伴って上がりやすく、日本高血圧学会も年齢とともに高血圧の割合が増えることを説明しています。しかし、同年代の平均値が高いことと、その値が医学的に正常であることは別です。「周囲も同じくらいだから」と健診の高値をそのままにしないようにしましょう。
平均値は、調査対象となった人たちの数値をまとめた統計です。高血圧の人が多い年代では、平均値自体も高くなります。そのため、50代や60代の平均血圧を自分の健診結果と比べて「平均以下だから正常」と判断すると、保健指導や受診勧奨の範囲を見落とす場合があります。
年代別の正常値を知りたい場合は、「年齢相応の平均」ではなく、正常血圧、健診の保健指導判定値、受診勧奨判定値を使い分けてください。特に健康診断では、年齢にかかわらず130/85mmHgと140/90mmHgの区切りを先に確認すると結果票を読みやすくなります。
治療中の降圧目標は正常値や診断基準と別に考える
高血圧で治療中の方が見る「降圧目標」は、健康な人の正常血圧や、高血圧を診断するときの基準とは目的が異なります。日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、年齢にかかわらず診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満を共通の降圧目標として示しています。
ただし、この数値は「健康診断で130/80mmHgを超えたら高血圧と診断される」という意味ではありません。また、すべての人が同じ治療を受けるという意味でもなく、実際の目標は健康状態や治療への耐え方などを踏まえて医師が調整します。
健診結果に加えてすでに通院中の場合は、「正常値」「診断基準」「治療目標」の3つを混同しないようにしましょう。薬を飲んでいる方は、家庭血圧が目標より高い、または低いと感じても自己判断で服薬量を変えず、記録を主治医に見せて確認してください。
健康診断後は血圧の段階に応じて次の行動を変える
健康診断で血圧が高かった場合は、結果票の区分、家庭血圧、受診指示の3点を順番に確認します。数値だけをインターネット上の「正常値」と照らし合わせるより、健診後に必要な行動を整理しやすくなります。
130〜139または85〜89mmHgは家庭血圧と生活習慣を確認する
健診で収縮期130〜139mmHgまたは拡張期85〜89mmHgだった場合は、厚生労働省の保健指導判定値を超える範囲です。この段階では「高血圧と確定」と考えるのではなく、家庭血圧を記録し、健診で案内された保健指導や生活習慣の見直しにつなげます。
家庭血圧を測る場合は、朝と夜の同じ条件で継続し、上と下の両方を記録しましょう。健診会場だけ高かったのか、普段から高めなのかを見分けるには、1回だけ測って最も低い値を採用するのではなく、複数日の記録を残しておくことが重要です。
また、健診では血圧だけを単独で見るのではなく、体重や腹囲、血糖、脂質などほかの結果も一緒に確認します。保健指導の案内が届いた場合は「まだ140/90未満だから不要」と判断せず、案内内容に沿って自分の生活を振り返りましょう。
140/90mmHg以上は結果票の受診案内と家庭血圧を確認する
収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上は、高血圧の診断基準に当たり、健診でも受診勧奨判定値を超える範囲です。結果票に医療機関の受診を促す記載がある場合は、その案内に従うことを優先してください。
受診までに家庭血圧を測れる場合は、朝と夜の値を記録して持参します。健診会場での測定値、家庭血圧、服用中の薬、前年までの健診結果がそろうと、医師が血圧の経過を確認しやすくなります。家庭血圧が低かったとしても、受診指示を自己判断で取り消す必要はありません。
一方、160/100mmHg以上だった場合は、厚生労働省の資料で速やかな受診が示されています。健診結果が返ってきた時点でこの範囲を確認したら、次年度の健診まで待たずに医療機関へ相談しましょう。すでに治療中なら、主治医へ健診値を共有します。
受診時は健診結果票と家庭血圧の記録を持参する
医療機関へ相談するときは、健診で測った血圧の数字だけを口頭で伝えるより、結果票そのものを持参すると確認がスムーズです。家庭血圧を測っている場合は、測定した日時と上・下の数値を一緒に記録し、普段の状態が分かる形にしておきましょう。
このとき、医療機関では血圧を測り直すほか、必要に応じてほかの検査結果や既往歴、服薬状況なども踏まえて状態を確認します。本記事では「健康診断の血圧結果の読み方」に範囲を絞り、高血圧の詳しい検査項目や検査の流れまでは扱いません。
高血圧が疑われた後にどのような検査を行うのかを知りたい方は、別記事で検査内容を確認してください。健診結果の解釈と高血圧検査の内容を分けて読むことで、今の自分が「結果を確認する段階」なのか「詳しい検査を受ける段階」なのかを整理できます。
健康診断の血圧は健診判定・診断基準・家庭血圧を分けて確認する
健康診断の血圧では、130/85mmHg以上は保健指導につなげる値、140/90mmHg以上は受診勧奨の区切りで高血圧の診断基準にも当たります。さらに160/100mmHg以上は、厚生労働省の健診後フィードバック例で速やかな受診が示される範囲です。
- 上と下のどちらか一方が基準を超えていないか確認する
- 130/85mmHgと140/90mmHgは役割が異なると理解する
- 健診で高い場合は家庭血圧を同じ条件で記録する
- 正常血圧の区分は年代によって緩くなるわけではない
- 受診指示がある場合や160/100mmHg以上の場合は受診を先延ばしにしない
健康診断で血圧が高いと指摘されても、1回の数値だけで病名や治療を自己判断する必要はありません。一方で、年齢や自覚症状の有無だけを理由に高い値を放置するのも避けましょう。結果票と家庭血圧を確認し、必要な段階では医療機関へつなげてください。









