健康診断で血圧や血糖、コレステロールの異常を指摘され、「動脈硬化が進んでいないか調べたい」と考える方もいるでしょう。動脈硬化検査にはCAVI、ABI、血管年齢などがあり、それぞれ確認している内容が異なります。
CAVIが高いから血管が詰まっている、血管年齢が高いから病気が確定した、という意味ではありません。検査ごとの役割を区別せずに結果を見ると、自分の血管がどのような状態なのかを正しく理解できない場合があります。
動脈硬化検査とはどのような検査なのかを理解するには、血管の「硬さ」「詰まり」「形」のどれを確認しているのかを分けて考える必要があります。CAVIとABIでは、同じ機器で測定しても示している内容は同じではありません。
この記事では、CAVI・ABI・血管年齢検査の内容と数値の見方、検査の流れ、頸動脈エコーや冠動脈石灰化スコアとの違いまで整理します。検査結果を見た後に何を確認し、どのような場合に医療機関へ相談すべきかまで確認していきましょう。
- CAVIは心臓から足首までの動脈の硬さを確認する
- ABIは腕と足首の血圧を比較して足の血流低下を確認する
- 血管年齢はCAVIなどの値を年齢と比較して分かりやすく示した表示である
- 頸動脈エコーやCTは血管の形や石灰化などを画像で確認する
動脈硬化検査は血管の硬さと詰まりを別の指標で調べる
動脈硬化を調べる方法は、大きく血管の機能を調べる検査と、血管の形を画像で見る検査に分けられます。CAVIやABIは機能を数値で確認する検査で、頸動脈エコーやCTとは確認している内容が異なります。
| 検査・指標 | 主に確認すること | 結果を見るときのポイント |
|---|---|---|
| CAVI | 心臓から足首までの動脈の硬さ | 8.0未満が正常、9.0以上が異常の目安。年齢やほかのリスク要因と合わせて確認する |
| ABI | 足の動脈の狭窄や閉塞による血流低下 | 1.00〜1.40が標準域。0.90以下の低値だけでなく1.40を超える高値にも注意する |
| 血管年齢 | CAVIなどを年齢別の値と比較した表示 | 実年齢との差だけで病気の有無を決めず、元になったCAVIなどの数値も確認する |
| 頸動脈エコー | 頸動脈の壁の厚さやプラーク、血流 | CAVI・ABIとは異なり、血管の形態を画像で確認する |
| 冠動脈石灰化スコア | 心臓を養う冠動脈に生じた石灰化 | CTを使用する検査であり、CAVIや血管年齢とは目的や検査方法が異なる |
なお、「血管ドック」は一つの検査名ではなく、CAVI・ABIや頸動脈エコーなどを組み合わせた健診コースの名称として使用される場合があります。この記事ではコース全体の内容ではなく、動脈硬化を調べる個々の検査と結果の読み方に絞って説明します。
CAVIは心臓から足首までの動脈の硬さを数値で示す
CAVIはCardio-Ankle Vascular Indexの略で、心臓から足首までの動脈の硬さを示す指標です。日本語では「心臓足首血管指数」などと呼ばれます。血管を伝わる脈波や血圧などから算出され、数値が高いほど動脈が硬くなっている状態を示します。
CAVIには、測定した瞬間の血圧の影響を受けにくいよう計算されている特徴があります。ただし、血圧とまったく無関係という意味ではありません。また、CAVIは加齢に伴って上昇するため、数値だけを見ず、年齢や高血圧、糖尿病、喫煙などの状況も含めて結果を確認します。
日本動脈硬化学会のガイドラインでは、CAVIは8.0未満が正常、9.0以上が異常とされています。8.0以上9.0未満はその間の範囲にあたるため、結果票の判定や過去の値と比較してください。CAVIだけでは、どの場所の血管が狭くなっているかまでは分かりません。
ABI検査は腕と足首の血圧を比較して足の血流を確認する
ABIはAnkle Brachial Indexの略で、足首の血圧と腕の血圧を比較する指標です。足へ向かう動脈に強い狭窄や閉塞があると、その先にある足首の血圧が低下するため、腕との血圧比から下肢の血流低下を調べます。
日本循環器学会と日本血管外科学会のガイドラインでは、ABIは1.00〜1.40が標準域、0.91〜0.99がボーダーライン、0.90以下が異常低値とされています。ABIが低い場合は、下肢の動脈に狭窄や閉塞がないか、症状やほかの検査結果と合わせて確認します。
一方、ABIは高ければ高いほど良いわけではありません。1.40を超える場合は、血管壁の石灰化などによって血管をカフで十分に圧迫できず、正確な血圧を測れていない可能性があります。その場合はTBIなど、別の方法による評価が必要になることがあります。
血管年齢はCAVIなどを実年齢と比較しやすくした表示である
血管年齢検査の内容は、年齢を直接測定する別の検査が行われるわけではありません。一般にはCAVIなどの測定結果を年齢別の値と比較し、「何歳程度の血管の状態に相当するか」を分かりやすく表示したものです。使用する機器や施設によって表示方法が異なる場合があります。
例えば、実年齢50歳の方に「血管年齢60歳」と表示されても、それだけで10年分の動脈硬化が進行している、あるいは心筋梗塞や脳梗塞を発症するという意味ではありません。血管年齢は診断名ではなく、元になっているCAVIなどの数値も確認する必要があります。
反対に、血管年齢が実年齢より若く表示されても、すべての血管にプラークや狭窄がないとは限りません。CAVIは血管の硬さを見る機能検査であり、血管の内部を直接撮影している検査ではないためです。結果票では血管年齢だけを切り取らず、CAVI・ABIを分けて確認しましょう。
CAVI・ABI検査は両腕と両足首の血圧と脈波を測定する
CAVIとABIは、同じ血圧脈波検査装置で同時に測定されることがあります。採血やCTとは検査方法が異なり、ベッドに横になった状態で腕と足首にカフを巻き、血圧や脈波を測定します。
検査前は安静にして腕と足首を出せる状態にする
血圧脈波検査では、測定前に一定時間安静にしてから検査を始める施設があります。市立砺波総合病院ではベッド上で5分ほど休んでから測定すると案内しており、東邦大学医療センター佐倉病院では検査前の喫煙や激しい運動を控えるよう案内しています。
検査では両腕と両足首に血圧測定用のカフを装着するため、腕と足首を出しやすい服装にしておくと検査を受けやすくなります。医療機関によっては裸足になるため、タイツや体を強く締め付ける衣類を避けるよう案内される場合もあります。
透析用のシャントがある、腕や足の血管手術を受けているなど、カフを巻く場所に注意が必要な場合は事前にスタッフへ伝えてください。CAVI・ABI以外の血液検査や画像検査を同じ日に受ける場合は、食事や服薬に別の指示が出ることがあるため、受診施設の案内を確認します。
測定では四肢のカフに加えて心電図や心音を記録する
CAVI・ABI検査では、ベッドに仰向けになり、左右の腕と足首へ血圧測定用のカフを装着します。CAVIを測定する装置では、さらに心電図用の電極や心音を拾うマイクを取り付け、心臓から足首まで脈が伝わる時間などを記録します。
カフが膨らむため、通常の血圧測定と同じように腕や足が締め付けられます。CAVI・ABIそのものの測定では針を刺したり造影剤を投与したり、放射線を使用したりしません。ただし、同じ日に採血やCTなどを受ける場合は、それぞれ別の検査方法が加わります。
検査時間は施設や装置によって異なりますが、日本赤十字社医療センターでは5〜10分程度、東邦大学医療センター佐倉病院ではおおよそ10分程度と案内しています。測定中に会話したり体を大きく動かしたりせず、スタッフの指示に従って安静を保ちます。
結果票ではCAVIとABIを左右それぞれ確認する
検査後は、CAVIとABIの数値が同じ結果票に表示されることがありますが、二つを一つの「動脈硬化度」として読まないようにします。CAVIは硬さ、ABIは主に下肢の血流低下を示すため、それぞれ別の項目として確認してください。
装置によっては左右それぞれのCAVIとABIが表示されます。片側だけABIが低い場合には、左右で下肢の血流状態が異なっている可能性もあります。ただし、一度の測定値だけで血管の狭窄部位や治療の必要性まで決めることはできません。
過去にも検査を受けている場合は、前回値との変化も医師へ確認してください。結果票に血管年齢やグラフが大きく表示されていても、それだけを見るのではなく、CAVI・ABIの実測値、左右差、血圧、既往歴などを一緒に確認すると結果の意味を整理できます。
CAVI・ABIの数値は検査ごとの基準に沿って確認する
CAVIとABIでは、数値の意味も基準も異なります。特にABIは「低い値」に加えて「高すぎる値」にも別の意味があるため、結果を一方向の良し悪しだけで読まないようにします。
CAVIは8.0未満と9.0以上で意味が異なる
日本動脈硬化学会のガイドラインでは、CAVIは8.0未満が正常、9.0以上が異常とされています。CAVIは動脈の硬さを表すため、数値が高い場合は心臓から足首までの動脈が硬くなっている状態が示唆されます。
ただし、CAVIは年齢とともに上昇することが知られています。また、高血圧や糖尿病、メタボリックシンドローム、喫煙などさまざまな要因との関連も報告されています。そのため、9.0以上という結果だけから原因を一つに決めることはできません。
8.0以上9.0未満だった場合も、数字だけを見て自己判断せず、年齢や過去の測定値、血圧、血糖、脂質などを確認してください。CAVIが高い場合にどの追加検査が必要かは一律ではなく、症状や背景によって医師が頸動脈エコーなどを組み合わせることがあります。
ABIは低値だけでなく1.40を超える高値にも注意する
| ABI | ガイドライン上の区分 |
|---|---|
| 0.90以下 | 異常低値 |
| 0.91〜0.99 | ボーダーライン |
| 1.00〜1.40 | 標準域 |
| 1.40超 | 異常高値。動脈の高度な石灰化などを確認する必要がある |
ABIが0.90以下の場合は、足へ血液を送る動脈に有意な狭窄や閉塞が存在する可能性があります。歩くとふくらはぎなどが痛み、休むと軽くなる間欠性跛行がある場合は、末梢動脈疾患との関連も含めて医療機関で評価を受けます。
一方、ABIが1.40を超える場合も「血流が非常に良い」と解釈するものではありません。血管の石灰化が強いとカフで動脈を十分に圧迫できず、実際より高い血圧として測定されることがあります。このような場合は、足趾上腕血圧比であるTBIなど別の検査が用いられることがあります。
正常範囲でもすべての動脈硬化を否定できるわけではない
CAVIとABIが基準内であっても、全身すべての血管に動脈硬化性の変化がないと断定することはできません。CAVIは主に動脈の硬さ、ABIは主に下肢の血流を確認する機能検査であり、血管壁そのものを画像として直接観察しているわけではないためです。
例えば頸動脈エコーでは、首の動脈の壁の厚さやプラークを画像で確認できます。冠動脈の石灰化を調べる場合はCTが使用されることがあります。このように、「硬さ」「詰まり」「血管壁の形」は異なる方法で評価するため、目的に応じて検査を組み合わせます。
反対にCAVIやABIが基準から外れていても、それだけで心筋梗塞や脳梗塞の発症を診断する検査ではありません。検査値は現在の血管状態を評価する情報の一部として使われます。異常を指摘された場合は、結果票を持参して医師へ相談してください。
追加検査では血管の形や動脈硬化を進める要因を確認する
CAVIやABIで確認できる範囲には限りがあります。必要に応じて、頸動脈エコーやCTなどの画像検査、血液検査、血圧測定などを組み合わせることで、異なる角度から血管の状態を確認します。
頸動脈エコーは血管壁の厚さやプラークを画像で確認する
頸動脈エコーは、首にある頸動脈へ超音波を当て、血管壁の厚さやプラーク、血流の状態などを画像で確認する検査です。CAVIのように血管の硬さを一つの数値で示すのではなく、実際の血管壁の形態を観察する点が大きな違いです。
そのため、CAVIが高かった場合に頸動脈エコーを追加して血管壁を確認するなど、異なる検査を組み合わせることがあります。一方、頸動脈エコーで見ているのは首の血管であり、その画像だけで心臓や足など全身のすべての動脈を直接確認できるわけではありません。
「CAVIと頸動脈エコーのどちらが優れているか」という関係ではなく、確認している内容が違います。日本動脈硬化学会も、動脈硬化検査を血管の形を見る方法と機能を見る方法に分け、個人の状況に応じて検査を組み合わせて評価することを示しています。
冠動脈石灰化スコアはCTで心臓の血管の石灰化を評価する
冠動脈石灰化スコアは、CTを使って冠動脈に存在する石灰化を数値化する検査です。冠動脈とは心臓の筋肉へ血液を送る血管を指します。CAVIや血管年齢のように脈波を測る検査ではなく、画像から石灰化を評価する点が異なります。
冠動脈石灰化は冠動脈の動脈硬化と関連するため、心血管リスクの評価を補う目的で使われる場合があります。ただし、石灰化スコアだけですべての冠動脈病変を確認できるわけではなく、スコアが高い・低いという結果だけで治療方針を決めるものでもありません。
また、冠動脈CTには放射線被ばくがあります。日本循環器学会の2023年改訂ガイドラインでは、日本人一般集団に対して一次予防目的で冠動脈CTによる石灰化評価を広く実施することを推奨する根拠は乏しいとされています。CAVIの代わりに全員が受ける検査ではありません。
血圧や血糖などは動脈硬化を進める要因として別に確認する
CAVIやABIは血管の状態を確認する検査ですが、「なぜ動脈硬化が進んでいる可能性があるのか」を調べるには、血圧や血液検査なども確認します。高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などは動脈硬化性疾患と関連するためです。
例えばCAVIが高かった場合も、CAVIだけを繰り返し測るのではなく、血圧や血糖、脂質などの状態を確認し、管理が必要な項目がないか医師と確認します。この記事では既存記事との重複を避けるため、高血圧や糖尿病それぞれの検査内容や基準値には踏み込みません。
体重や体組成について確認したい場合は、BMIや体脂肪率も別の記事で確認できます。動脈硬化検査の記事内でBMIの計算方法や体脂肪率の基準を重ねて説明するのではなく、それぞれの検査結果を分けて把握してください。
健診異常や足の症状がある場合は検査の目的を分けて考える
動脈硬化検査は、「血管年齢を知りたい」という目的で健診のオプションとして受ける場合と、症状や基礎疾患があり医師が診療上必要と考えて行う場合があります。症状がある方は、任意の健診だけで済ませないようにしてください。
血圧や血糖などの異常を指摘された場合は血管の状態も確認する
健診で血圧、血糖、脂質などの異常を指摘されている方や、喫煙習慣がある方では、動脈硬化性疾患のリスクについて確認が必要になる場合があります。CAVI・ABIを測定するかどうかは、年齢や既往歴、症状、ほかの検査値などを含めて医師と相談します。
ここで注意したいのは、CAVI・ABIを受ければ血液検査や血圧測定が不要になるわけではないことです。CAVIは血管の硬さ、ABIは足の血流を見ているため、血糖やLDLコレステロールなど動脈硬化に関係する要因そのものを測っている検査ではありません。
逆に、血圧や血液検査が基準内であっても、症状や既往歴によって血管検査が必要になる場合があります。どの検査を追加するかは「動脈硬化が心配だから全部受ける」と決めるのではなく、何を確認する必要があるのかを医師へ伝えて相談してください。
歩くと足が痛む場合は健診ではなく医療機関で相談する
末梢動脈疾患では、歩行するとふくらはぎなどが痛くなり、休むと再び歩けるようになる「間欠性跛行」がみられることがあります。進行すると安静にしているときにも足の冷感や痛みを感じる場合があり、ABIはこのような下肢の血流低下を調べる際に使用されます。
すでに足の痛みや冷感などの症状がある場合は、血管年齢を知るための健診を予約して終わりにせず、医療機関で症状を伝えてください。必要に応じてABIだけでなく、超音波検査やほかの画像検査などが行われます。
また、強い胸の痛みが続く、突然片側の手足に力が入らない、言葉が出にくいなどの症状がある場合は、動脈硬化検査を後日受ける段階ではありません。心筋梗塞や脳卒中など緊急性の高い病気でもみられる症状のため、速やかな医療機関への受診が必要です。
基準外の結果が出た場合は数値を持参して医師へ相談する
CAVIが9.0以上、ABIが0.90以下または1.40を超えるなど、基準から外れた結果が出た場合は、結果票を医療機関へ持参して相談します。自覚症状がない場合でも、検査値だけをインターネット上の情報と照らして自己判断しないようにしてください。
受診先は状況によって異なりますが、高血圧や糖尿病などを治療している場合はまず主治医へ相談できます。足の血流低下が疑われる場合は循環器内科や血管外科などで詳しく評価されることがあります。受診先に迷う場合は、検査を受けた施設で結果説明を受けてください。
過去のCAVI・ABIがある方は、今回の結果と合わせて持参すると変化を確認できます。重要なのは「血管年齢が何歳だったか」だけではなく、CAVI・ABIの実測値と、血圧・血糖・脂質・症状などを一緒に確認することです。
動脈硬化検査はCAVI・ABI・画像検査の役割を分けて確認する
動脈硬化検査とは、一つの検査だけを指す言葉ではありません。CAVIでは心臓から足首までの動脈の硬さ、ABIでは主に足の血流低下を確認し、血管年齢はCAVIなどの結果を年齢と比較して分かりやすく示します。
さらに、頸動脈エコーでは血管壁の厚さやプラーク、冠動脈石灰化スコアではCTによる冠動脈の石灰化を確認します。それぞれ見ているものが異なるため、一つの数値だけで全身の動脈硬化の有無を決めることはできません。
- CAVIは血管の硬さを示し、8.0未満が正常、9.0以上が異常の目安
- ABIは足の血流を確認し、0.90以下の低値と1.40を超える高値の両方を確認する
- 血管年齢だけで病気の有無を決めず、CAVIなど元の数値を確認する
- 正常値でもすべてのプラークや狭窄を否定できるわけではない
- 異常値や症状がある場合は結果票を持参して医師へ相談する
健診結果で血圧や血糖、脂質などの異常を指摘されている方や、足の症状がある方は、どの血管を何の目的で調べる必要があるのかを医師と確認してください。検査名を増やすのではなく、CAVI・ABI・画像検査それぞれの役割を理解して結果を確認しましょう。
