肺活量検査とは、息を吸ったり吐いたりして、肺に出入りする空気の量や吐き出す速さを測る検査です。呼吸機能検査の結果には%肺活量や1秒率など複数の数値が並ぶため、どの項目を確認すればよいのか迷うことがあります。
ただし、肺活量そのものが多いか少ないかだけでは呼吸機能を判断できません。年齢・性別・身長などから算出した予測値との比較や、息を最初の1秒間にどれだけ吐き出せるかも合わせて確認する必要があります。
検査で測る項目と測定方法、呼吸機能検査の基準値、数値が低かった場合の考え方を整理すると、健康診断や人間ドックでもらった結果表をどこから確認すればよいのかが分かります。
肺活量検査とは呼吸の量と空気の通りやすさを調べる検査
肺活量検査は、主にスパイロメータという機器を使い、肺へ出入りする空気の量と、空気を吐き出す速さを測ります。一般には「肺機能検査」「呼吸機能検査」と呼ばれる検査の一部です。
スパイロメトリーは代表的な呼吸機能検査
健診や呼吸器診療で行われる代表的な方法が、スパイロメトリーです。スパイロメータにつながったマウスピースをくわえ、検査担当者の指示に合わせてゆっくり息を吸ったり吐いたり、できるだけ勢いよく息を吐き出したりします。
スパイロメトリーでは、肺がどの程度の空気を出し入れできるのかだけでなく、気道を通って空気をスムーズに吐き出せているかも確認できます。そのため、単純に「肺が大きいか小さいか」を調べる検査ではありません。
日本呼吸器学会では、肺機能検査について、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患などが疑われる場合や、これらの状態を確認するときに行う検査と説明しています。ただし、検査結果だけで特定の病気が確定するわけではなく、症状や画像検査などとの組み合わせが必要です。
肺活量だけでなく1秒量と1秒率も測定する
呼吸機能検査では「肺活量」という言葉が目立ちますが、実際には複数の数値を測ります。特に健診結果を確認するときは、%肺活量と1秒率の意味を押さえておくと結果を読みやすくなります。
| 主な項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 肺活量(VC) | ゆっくり最大限まで吸ったり吐いたりしたときに出入りする空気の量 |
| %肺活量(%VC) | 年齢・性別・身長などから求めた予測肺活量に対して、実測した肺活量がどの程度あるかを示す割合 |
| 努力肺活量(FVC) | 胸いっぱいまで息を吸ったあと、できるだけ速く強く最後まで吐き出した空気の量 |
| 1秒量(FEV1) | 努力肺活量を測定するとき、最初の1秒間に吐き出せた空気の量 |
| 1秒率(FEV1/FVC) | 努力肺活量のうち、最初の1秒間で吐き出せた割合 |
肺活量は肺へ出入りできる空気の「量」を表す一方、1秒量や1秒率は空気をどの程度速く吐き出せるかを見る指標です。両方を確認することで、肺が十分に広がっているか、気道が狭くなっていないかという異なる側面を整理できます。
胸部X線検査とは確認しているものが異なる
肺を調べる検査には胸部X線検査もありますが、肺活量検査とは確認する対象が異なります。呼吸機能検査は肺や気道の「働き」を数値で確認する検査で、胸部X線検査は胸部を画像として確認する検査です。
そのため、胸部X線検査で大きな異常が指摘されていなくても、呼吸機能検査では空気を吐き出しにくい状態が示されることがあります。反対に、呼吸機能検査だけですべての肺の異常を確認できるわけでもありません。
健康診断の胸部X線検査については、検査方法や確認できる内容を別の記事でまとめています。肺の画像を確認する検査との違いまで知りたい場合は、合わせて確認してください。
肺活量検査の内容は呼吸方法を変えながら複数の数値を測定する
肺活量検査では、マウスピースを通して呼吸し、ゆっくりした呼吸と、最大限の力で行う呼吸を使い分けながら測定します。正確な結果を得るには、検査担当者の合図に合わせて呼吸することが重要です。
鼻をクリップで閉じマウスピースから呼吸する
スパイロメトリーでは、鼻から空気が漏れないように鼻をクリップで閉じ、スパイロメータにつながったマウスピースを口にくわえます。測定する空気が口以外から漏れると正確な結果になりにくいため、唇をマウスピースへしっかり密着させることが大切です。
検査中は、担当者から「大きく吸ってください」「最後まで吐いてください」などの指示があります。普段の呼吸とは異なり、肺いっぱいまで吸い込んだり、もう吐けないと感じるところまで息を吐いたりする場面があります。
呼吸のタイミングや力の入れ方によって測定値が変化するため、呼吸機能検査は受診者の協力が必要な検査です。十分に息を吸えていない、途中で吐くのをやめた、口元から空気が漏れたなどの場合は、再度測定することがあります。
ゆっくり最大限まで呼吸して肺活量を測る
肺活量を測定するときは、ゆっくりと最後まで息を吐き、そのあと胸いっぱいまでゆっくり息を吸います。さらに最大限まで吸った状態から、再びゆっくりと最後まで吐くことで、肺へ出入りできる空気の量を測定します。
ここで得られる肺活量は、単純な実測値だけで評価するわけではありません。年齢・性別・身長などから予測される肺活量と比較し、実測値が予測値の何%に当たるのかを%肺活量(%VC)として確認します。
例えば予測肺活量が4.0Lで実測肺活量が3.6Lなら、%肺活量は90%です。同じ3.6Lという実測値でも、年齢や体格によって予測値が異なるため、評価も変わります。このため、他人の肺活量の実測値と単純に比較して良し悪しを判断する方法は適切ではありません。
最大限吸って一気に吐き努力肺活量と1秒量を測る
もう一つ重要なのが、胸いっぱいまで息を吸ったあと、できるだけ速く強く息を吐き出す測定です。この方法で努力肺活量(FVC)と1秒量(FEV1)を測ります。途中で力を緩めず、最後まで吐き続ける必要があります。
1秒量は、勢いよく吐き始めてから最初の1秒間に吐き出せた空気量です。さらに、1秒量を努力肺活量で割ることで1秒率(FEV1/FVC)を求めます。気道が狭く空気が通りにくい状態では、最初の1秒間に十分な量を吐き出せず、1秒率が低下することがあります。
最大限の力を使う測定では、最初の測定だけでは十分な呼気が得られない場合もあります。そのため、医療機関では測定結果の再現性を確認する目的で複数回測定することがあります。数値だけでなく、適切な呼吸動作で測定できたかも結果を評価するうえで重要です。
呼吸機能検査の基準値は%肺活量と1秒率を中心に確認する
呼吸機能検査では、%肺活量80%以上、1秒率70%以上が一般的な目安として使われています。ただし、すべての数値に一律の基準値を当てはめるのではなく、年齢・性別・身長などを反映した予測値や正常下限値も確認します。
%肺活量は80%以上が一般的な目安
%肺活量(%VC)は、年齢・性別・身長などから計算した予測肺活量に対し、実際に測定した肺活量が何%あるかを示す数値です。日本呼吸器学会では、予測値に対して80%以上を正常の目安としています。
例えば予測肺活量が3.5L、実測した肺活量が3.15Lなら、%肺活量は90%です。一方、同じ予測肺活量3.5Lに対して実測値が2.6Lなら約74%となり、80%を下回ります。
%肺活量が低い場合には、肺そのものが広がりにくい状態だけでなく、胸郭の変形や呼吸筋力の低下なども関係することがあります。このため「肺活量が80%未満だから特定の肺疾患がある」とは判断せず、そのほかの検査結果や症状と合わせて確認します。
1秒率は70%以上が一般的な目安
1秒率(FEV1/FVC)は、最大限まで息を吸ってから一気に吐き出した空気のうち、最初の1秒間でどの程度吐き出せたかを示す割合です。日本呼吸器学会では、70%以上を正常の目安としています。
例えば努力肺活量が4.0Lで、最初の1秒間に3.2L吐き出せた場合、1秒率は80%です。努力肺活量が同じ4.0Lでも、1秒量が2.4Lなら1秒率は60%となります。
1秒率が低い場合は、一度に吸える空気量そのものよりも、空気を素早く外へ出しにくい状態を考えます。COPDや喘息など、気道が狭くなる病気では1秒量や1秒率が低下することがありますが、検査値だけで病名を確定することはできません。
%肺活量と1秒率を組み合わせて換気障害のパターンを整理する
呼吸機能検査では、%肺活量と1秒率を別々に見るだけでなく、2つを組み合わせることで、呼吸機能の低下がどのようなパターンを示しているかを整理します。
| %肺活量 | 1秒率 | 一般的な分類 | 結果の捉え方 |
|---|---|---|---|
| 80%以上 | 70%以上 | 正常範囲のパターン | 2つの主要指標では明らかな換気障害を示していない |
| 80%未満 | 70%以上 | 拘束性換気障害のパターン | 肺へ十分な量の空気を出し入れしにくい状態が示唆される |
| 80%以上 | 70%未満 | 閉塞性換気障害のパターン | 気道が狭く、空気を素早く吐き出しにくい状態が示唆される |
| 80%未満 | 70%未満 | 混合性換気障害のパターン | 拘束性と閉塞性の両方の特徴がみられる |
この分類は病名を決めるものではありません。スパイロメトリーが正常範囲でも呼吸器疾患を完全に否定できるわけではなく、異常パターンがみられた場合も、その原因を確認するためには診察や追加検査が必要です。
基準値は年齢・性別・身長によって異なる
呼吸機能検査で「基準値」と呼ばれる数値には、%肺活量80%、1秒率70%といった分かりやすい目安だけでなく、個人の条件から算出される予測値や正常下限値があります。
日本呼吸器学会は、日本人成人のスパイロメトリーについて、性別・年齢・身長を入力して基準値や正常下限値を算出できる資料を公開しています。2022年にはZ-score(同じ条件の集団の中で測定値がどの程度離れているかを示す指標)も計算できるよう更新されています。
そのため、結果表に記載された実測値だけをインターネット上の数値と比較するのではなく、検査施設が示した予測値、%予測値、正常下限値、判定区分を合わせて確認することが重要です。特に年齢や体格が異なる人同士で肺活量のL数だけを比較しても、適切な評価にはなりません。
基準値を下回った場合は低下した指標によって意味が異なる
呼吸機能検査で基準値を下回っても、それだけで病気が確定するわけではありません。%肺活量と1秒率のどちらが低下しているかによって、考える呼吸機能の状態が異なります。
%肺活量が低い場合は肺が十分に広がらない状態を確認する
%肺活量が80%未満で、1秒率が70%以上の場合は、一般に拘束性換気障害のパターンとして整理されます。これは空気を吐く速さよりも、肺へ出入りできる空気の総量が少なくなっている状態です。
日本呼吸器学会では、肺活量が減少する病気や状態として、間質性肺疾患や肺線維症など肺が硬くなる病気、胸郭の変形、呼吸筋力が低下して肺の容積が小さくなる状態などを挙げています。
ただし、測定時に十分息を吸えていなかった場合や、最後まで息を吐き切れなかった場合などにも測定値へ影響する可能性があります。結果表で%肺活量が低かった場合は、数値だけから原因を自己判断せず、判定区分や医師からの指示を確認してください。
1秒率が低い場合は空気を素早く吐き出しにくい状態を確認する
%肺活量が80%以上でも1秒率が70%未満の場合は、一般に閉塞性換気障害のパターンとして整理されます。肺に取り込める空気量は保たれていても、気道を通して空気を素早く外へ出しにくい状態です。
日本呼吸器学会では、1秒量が減少する病気としてCOPDや喘息などを挙げています。特にCOPDでは、気道が狭くなったり肺の構造が変化したりすることで、勢いよく息を吐こうとしても空気が出にくくなることがあります。
一方、喘息などでは症状や検査結果が時期によって変化する場合があります。1回のスパイロメトリーだけでは十分に評価できないケースもあるため、呼吸器診療では必要に応じて気管支拡張薬の吸入前後で1秒量を比較する検査などが行われます。
両方が低い場合や症状がある場合は追加評価が必要になる
%肺活量が80%未満、1秒率も70%未満の場合は、拘束性と閉塞性の特徴を両方示す混合性換気障害のパターンとして整理されます。ただし、スパイロメトリーの数値だけで原因となる病気を特定することはできません。
呼吸機能をさらに詳しく確認する場合は、肺拡散能などを測定する精密肺機能検査や、必要に応じて胸部画像検査などが行われます。肺拡散能は、肺から体内へ酸素を取り込む能力を調べる指標で、通常のスパイロメトリーとは測定する内容が異なります。
息切れ、長く続く咳、痰、喘鳴(呼吸するときにゼーゼー・ヒューヒューと音がする状態)などの症状がある場合は、健診結果の数値だけで経過を見るか決めず、医療機関へ相談しましょう。結果表に「要再検査」「要精密検査」「要受診」などの指示がある場合も、その指示に従ってください。
肺活量検査は法定健康診断の必須項目ではなく目的に応じて行われる
肺活量検査は人間ドックや医療機関の呼吸機能評価などで行われますが、一般的な労働者の定期健康診断で一律に実施される必須項目ではありません。受けられるかどうかは健診コースや医療機関によって異なります。
一般的な定期健康診断では肺活量検査は必須項目に含まれない
労働安全衛生規則で定められている一般的な定期健康診断には、既往歴・業務歴の調査、身長・体重・腹囲、視力・聴力、胸部X線、血圧、血液検査、尿検査、心電図などが定められていますが、肺活量検査は定期健康診断の法定項目には含まれていません。
そのため「毎年会社の健康診断を受けているから肺活量も確認できている」とは限りません。人間ドックの基本コースや追加検査として呼吸機能検査が設定されている場合もあるため、受診する健診施設の検査項目を確認してください。
健康診断で行われる基本的な検査項目については別の記事で整理しています。肺活量検査以外にどのような検査が含まれるのか知りたい場合は、こちらも確認してください。
喫煙歴や呼吸器症状がある場合は結果を医師と確認する
呼吸機能検査は、COPDや喘息など気道が狭くなる病気や、間質性肺疾患など肺が広がりにくくなる病気の評価に利用されます。そのため、長い喫煙歴がある場合や、慢性的な咳・痰・息切れなどがある場合には、検査値と症状を合わせて確認することが重要です。
一方、%肺活量80%以上、1秒率70%以上であれば、主要な指標は一般的な目安の範囲内です。ただし、基準範囲内という結果だけで、すべての呼吸器疾患が否定されるわけではありません。
階段や坂道で以前より息切れする、咳や痰が長期間続いている、呼吸時に音がするなどの症状がある場合は、健診結果が基準範囲内でも症状について医療機関へ伝えてください。検査値だけでなく症状や経過を含めて評価する必要があります。
異常値が出ても病名を自己判断せず判定区分を確認する
呼吸機能検査の結果で最初に確認したいのは、個々の数値だけでなく、健診施設が記載している判定区分です。基準値から外れていても、測定状態や過去の結果、症状などを含めて再検査や精密検査が必要か判断されます。
特にスパイロメトリーは、受診者がどの程度深く息を吸い、どこまで強く長く吐き続けられたかによって結果が変化します。測定結果に問題がある場合は、同じ検査を再度行ったうえで評価されることもあります。
「%肺活量が低いから肺線維症」「1秒率が低いからCOPD」と数値だけで病名を決めないことが重要です。再検査・精密検査・受診などの指示があれば、その内容に従い、必要に応じて呼吸器内科などで詳しい評価を受けましょう。
肺活量検査の内容と基準値を理解して結果を確認する
肺活量検査は、スパイロメータを使って肺に出入りする空気の量や、空気を吐き出す速さを測る呼吸機能検査です。結果を見るときは肺活量の実測値だけでなく、%肺活量や1秒率など複数の指標を確認します。
- %肺活量は予測肺活量に対する実測値の割合
- %肺活量80%以上が一般的な正常の目安
- 1秒率は努力肺活量のうち最初の1秒間で吐き出せた割合
- 1秒率70%以上が一般的な正常の目安
- %肺活量と1秒率を組み合わせて換気障害のパターンを確認する
- 基準値は年齢・性別・身長などによって異なる
- 異常値だけで病名を決めず判定区分や医師の指示を確認する
%肺活量や1秒率が基準を下回った場合でも、それだけで病気が確定するわけではありません。結果表の判定を確認し、再検査や精密検査、医療機関の受診を指示されている場合は、数値を自己判断せず次の検査へ進みましょう。
- Q27.肺機能検査とはどのような検査法ですか?|一般社団法人日本呼吸器学会
- LMS法による日本人のスパイロメトリー新基準値|一般社団法人日本呼吸器学会
- 呼吸機能検査ハンドブック|一般社団法人日本呼吸器学会
- 労働安全衛生規則第44条|厚生労働省
情報確認日:2026年9月4日













