健康診断の視力検査で「眼鏡やコンタクトは着けたままでよいのか」「0.7や0.6という結果は何を意味するのか」と迷うことがあります。受け方を誤ると、普段の見え方と異なる結果になることもあります。
職場の定期健康診断では視力検査が検査項目に含まれ、普段の状態で遠くを見る力を確認します。検査のやり方と結果の意味を知っておくと、再検査や眼科受診が必要な場面を整理できます。
健康診断の視力検査では普段の見え方を確認する
健康診断の視力検査は、日常生活や仕事で普段どの程度見えているかを確認する検査です。眼科で病気を詳しく調べる検査や、眼鏡の度数を決めるための検査とは目的が異なります。
職場の定期健康診断では視力検査が検査項目に含まれる
労働安全衛生規則では、常時使用する労働者に対して行う定期健康診断の項目として、身長・体重・腹囲とともに視力と聴力の検査が定められています。雇入れ時の健康診断でも視力検査が検査項目に含まれています。
職場の健康診断で行われる視力検査は、眼科疾患を確定することではなく、働く人が現在どの程度見えているのかを確認する役割があります。視力が低下していれば、仕事で遠くの表示や文字を確認しにくくなる可能性があり、必要に応じて眼科受診や視力矯正につなげます。
なお、健康診断には視力以外にも血圧、尿検査、血液検査、胸部X線検査などがあります。どのような検査を受けるのか全体像を確認したい場合は、健康診断の検査項目をあわせて確認しておきましょう。
健康診断では裸眼または普段使う眼鏡やコンタクトで測定する
日本眼科医会では、普段の生活を送っている状態で測った視力を「日常視力」としています。眼鏡やコンタクトレンズを使わず生活している人は裸眼で、遠くを見るときに眼鏡やコンタクトレンズを使っている人は、普段使用している状態で測定する考え方です。
一方、眼科で行う視力検査には完全に屈折を矯正した状態で測る矯正視力があります。近視・遠視・乱視などに合わせてレンズを調整し、その人が矯正によってどこまで視力を出せるか確認します。
そのため、健康診断で測った「眼鏡を着けた状態の視力」と、眼科で調べた最高の矯正視力は同じ意味ではありません。健康診断の結果が1.0未満だったからといって、その数値だけで眼科疾患があるとは判断できない点も押さえておきましょう。
視力が良くても目の病気がないとは限らない
視力検査だけでは、目の健康状態全体を確認できません。視機能には視力だけでなく、視野、色覚、両眼でものを見る機能などがあり、職場の一般的な健康診断で法定の眼科的検査として行われるのは視力検査です。
例えば緑内障では、視野に障害が生じていても中心部の視力が保たれている時期があります。そのため、健康診断で視力1.0と測定されても、緑内障をはじめとした眼疾患がないことを保証する結果ではありません。
目の奥にある網膜や視神経を調べる眼底検査や、眼球内の圧力を測る眼圧検査は、視力検査とは確認する内容が異なります。それぞれの検査で分かることを知りたい場合は、関連する解説も確認してください。
健康診断で行う視力検査のやり方
健康診断の視力検査では、一般に片目ずつランドルト環の切れ目の方向を答えて遠方視力を測定します。施設によって視力表を使う方法と自動視力計を使う方法があります。
ランドルト環の切れ目を片目ずつ答える
視力検査で使われる「C」のような記号は、ランドルト環と呼ばれます。輪の一部に切れ目があり、その切れ目が上下左右などのどちらを向いているかを答えることで、どの程度細かなものまで識別できるかを調べます。
視力表を使用する標準的な遠見視力検査では、5m離れた位置から片目ずつ測定します。検査しない側の目を遮眼子などで覆い、見えている側の目でランドルト環を確認します。視標は見分けやすいものから徐々に細かくなり、識別できる大きさから視力値を求めます。
片方の目を測り終えたら左右を入れ替え、もう片方も同じように測ります。左右別々に確認することで、片方の目だけ視力が低下している場合も把握できます。自動視力計でも検査の考え方は同じで、表示されたランドルト環の方向を答えながら左右それぞれの視力を測定します。
眼鏡やコンタクトレンズは普段の使用状態を伝える
普段から遠くを見るために眼鏡やコンタクトレンズを使っている場合、健康診断でも普段の見え方を再現できるよう準備することが大切です。眼鏡は健診会場へ持参し、コンタクトレンズを使用している場合も受付や検査担当者へ伝えましょう。
健診施設によっては裸眼視力と眼鏡・コンタクトレンズ使用時の視力を分けて記録する場合があります。どの状態で測るかは施設や健診内容によって異なるため、「普段は運転時だけ眼鏡を使う」など使用状況を検査担当者へ伝えてください。
コンタクトレンズを普段使っていても、目の痛み、強い充血、異物感などがある状態で無理に装用して検査する必要はありません。コンタクトレンズによる不調がある場合は使用を中止し、症状が続く場合は眼科を受診してください。
見えない場合は目を細めずそのまま伝える
ランドルト環の切れ目が分からない場合は、無理に方向を当てる必要はありません。見えない、または判別できないことをそのまま検査担当者へ伝えましょう。視力検査は合否を競うものではなく、現在の見え方を確認するために行います。
日本眼科医会が示す視力検査方法でも、測定中は目を細めないよう注意することが示されています。目を細めると一時的に像が見えやすくなる場合があり、普段の見え方とは異なる状態で測定される可能性があります。
「いつもより極端に見えにくい」「片方だけ急にぼやける」「二重に見える」など普段と異なる状態を感じた場合は、数値だけ確認して終わらせず検査担当者にも伝えてください。過去の健診結果が手元にあれば、前年までの視力と比較して変化を確認すると、その後の対応を決めやすくなります。
健康診断の視力検査結果は数値と前回からの変化を確認する
日本眼科医会の「はたらく人の目を守る眼科検診ハンドブック」では、日本人間ドック・予防医療学会の判定区分を基に1.0以上、0.7〜0.9、0.6以下の3段階で対応が整理されています。
| 視力 | 判定区分 | 対応 |
|---|---|---|
| 1.0以上 | 異常なし(A) | 視力についての事後措置は不要 |
| 0.7〜0.9 | 要再検査・生活改善(C) | 自覚症状や前回値との差が大きい場合は眼科受診を考える |
| 0.6以下 | 要精密検査・治療(D) | 眼科を受診する |
判定方法や記載方法は健診施設によって異なる場合があります。実際に受け取った結果票に再検査や受診の指示が記載されている場合は、その指示に従ってください。
視力1.0以上でも目の状態すべてが正常とは限らない
視力1.0以上は、遠方のものを見る力については良好な結果です。日本眼科医会の資料でも、健康診断における日常視力が両眼とも1.0以上の場合は「異常なし」とする判定方法が示されています。
ただし、1.0以上という結果は眼疾患がないことを意味するものではありません。視力検査は主に中心部でものを識別する力を測定するため、視野の一部が欠ける病気などでは、病気が進行する途中まで視力が保たれる場合があります。
健康診断で視力に問題がなくても、視界が欠ける、物がゆがむ、かすむ、片目だけ見え方が異なるといった自覚症状がある場合は、視力1.0という数値だけで様子を見続けないようにしましょう。症状に応じて眼科で必要な検査を受けることが重要です。
0.7〜0.9は前回との差や自覚症状もあわせて確認する
0.7〜0.9は、日本眼科医会の資料では「要再検査・生活改善(C)」に区分されています。ただし、0.7〜0.9だから直ちに日常生活へ大きな支障が出るという意味ではありません。普段の生活で特に不自由を感じない人もいます。
確認したいのは、以前の視力との差です。例えば前年まで眼鏡を着けて1.2だった人が今回0.7になった場合と、以前から0.8前後で推移している場合では、変化の意味が異なります。左右差が広がっていないかも結果票で確認しましょう。
日本眼科医会では、0.7〜0.9でも自覚症状がある場合や前回値との差が大きい場合は眼科受診を勧めるとしています。眼鏡やコンタクトレンズを使用している人は、度数が現在の目に合っているかを含めて眼科で確認できます。
0.6以下では眼科で原因を確認する
0.6以下は、日本眼科医会の資料では「要精密検査・治療(D)」とされ、眼科受診が勧められています。視力低下の原因が単なる度数のずれなのか、眼疾患が関係しているのかを確認する必要があります。
裸眼で0.6以下だった場合は、近視・遠視・乱視などの屈折異常によって十分に見えていない可能性があります。すでに眼鏡やコンタクトレンズを使った状態でも0.6以下の場合は、矯正が十分でない場合に加えて、目の病気によって視力が出にくくなっている可能性も考えます。
日本眼科医会では、要精密検査となった場合に、眼科を受診せず眼鏡店だけで眼鏡を作ったり、インターネットだけでコンタクトレンズを購入したりすると眼疾患を見逃す可能性があるとしています。まず眼科で原因を確認したうえで、必要な矯正や治療について相談しましょう。
視力低下を指摘された後は数値と症状から受診時期を決める
健康診断で視力低下を指摘された場合は、今回の数値だけでなく、裸眼か矯正視力か、左右差、過去からの変化、自覚症状を確認します。急な変化や症状がある場合は結果通知を待たず受診が必要なこともあります。
まず裸眼か矯正視力かと前年の結果を確認する
結果票を受け取ったら、最初に右眼と左眼の数値を確認し、裸眼で測定したのか、眼鏡・コンタクトレンズを使った状態だったのかを確認してください。同じ0.6でも、裸眼の0.6と普段の眼鏡を着けた状態での0.6では、その後に確認すべき内容が異なります。
次に、過去の健診結果と比較します。前年までと比べて急に低下していないか、片方の目だけ低下していないかを確認しましょう。日本眼科医会でも、0.7〜0.9の場合は前回値との差が大きければ眼科受診を勧めています。
健診の視力検査だけでは視力低下の原因までは確定できません。眼科では必要に応じて、屈折検査、矯正視力検査、眼圧検査、細隙灯顕微鏡検査、眼底検査などを組み合わせ、現在の見え方が低下している原因を調べます。
0.6以下や大きな視力低下があれば眼科を受診する
健康診断で0.6以下となった場合は、結果票の指示を確認したうえで眼科を受診しましょう。眼鏡やコンタクトレンズを使用していない人だけでなく、矯正した状態でも十分な視力が出ていない人は原因の確認が必要です。
0.7〜0.9でも、「前回1.2だったのに今回は0.7だった」など短期間で大きく変化した場合や、片方だけ見えにくくなった場合には眼科受診を考えてください。数値が低下した原因を、健康診断だけで近視や眼鏡の度数の問題と決めつけることはできません。
眼科を受診するときは、今回の健康診断結果だけでなく、過去の結果票があれば持参すると経年変化を伝えやすくなります。普段使用している眼鏡も持参し、コンタクトレンズを使用している場合は製品や度数、使用時間などを医師へ伝えましょう。
突然の視力低下や眼痛などがあれば健診結果を待たず受診する
突然視力が低下した、急に強い眼痛が出た、突然ものが二重に見えるといった症状がある場合は、健康診断の判定にかかわらず速やかに医療機関を受診してください。日本眼科医会も、急な症状では早急な治療が必要な疾患が隠れている可能性があるとしています。
健康診断で「異常なし」とされた場合でも同様です。視力検査は健診を受けた時点の限られた条件で見え方を測る検査であり、その後に起きた急な変化や、視力検査では捉えられない異常まで否定できるものではありません。
特に、視界の一部が突然見えなくなる、急激にかすむ、強い痛みがある、急に二重に見えるといった変化は放置せず相談しましょう。普段と明らかに異なる見え方がある場合は、「健診では視力が良かった」という理由だけで受診を先延ばしにしないことが大切です。
健康診断の視力検査は普段の見え方と経年変化を確認する
健康診断の視力検査では、一般に普段の裸眼、眼鏡、コンタクトレンズの状態で遠くを見る力を確認します。ランドルト環などを使い、片目ずつ測定するのが一般的なやり方です。
結果は数値だけで判断せず、前年との差、左右差、自覚症状まで確認しましょう。日本眼科医会の資料では、1.0以上は異常なし、0.7〜0.9は症状や前回との差に応じて受診、0.6以下は眼科受診が勧められています。
また、視力が良好でもすべての眼疾患を除外できるわけではありません。見え方に異変がある場合や、健診結果で再検査・精密検査を指示された場合は、結果票を持参して眼科で相談してください。
情報確認日:2026年9月4日













