健康診断で聴力検査を正しく活かす

健康診断の聴力検査で「1,000Hz」「4,000Hz」「30dB」「40dB」といった数字を見ても、何を示しているのか分からず、検査結果をどう受け止めればよいか迷うことがあります。

数値の意味を知らないままでは、30dB・40dBをそのまま聴力の正常値と捉えたり、「所見あり」と記載されていても必要な対応を判断できなかったりする可能性があります。

健康診断で確認する音の高さと大きさ、オージオメーター検査の方法、聴力検査の正常値の考え方を整理します。定期健康診断と雇入れ時健康診断の違いや、所見があった場合の対応も確認します。

検査結果に記載された数値の意味が分かれば、自分の聴力がどのように評価されたのかを把握し、必要に応じて再検査や耳鼻咽喉科の受診へ進むべきか判断できます。

健康診断の聴力検査は1,000Hzと4,000Hzの聞こえを確認する

健康診断の聴力検査は1,000Hzと4,000Hzの聞こえを確認する

一般的な定期健康診断では、1,000Hzと4,000Hzの2種類の音を使って左右の耳の聞こえを確認します。それぞれ異なる高さの音を調べることで、会話に関係する音域と高い音域の聴力を効率よく確認します。

検査する周波数 音の特徴 一般的な定期健康診断の検査音
1,000Hz 日常会話に関係する音域を確認するために使われる 30dB
4,000Hz 高い音域の聴力低下を確認するために使われる 40dB

出典:労働安全衛生規則の一部を改正する省令等の施行について|厚生労働省

1,000Hzは会話に関係する音域の聞こえを確認する

1,000Hzの「Hz(ヘルツ)」は、音の高さを表す単位です。数値が小さいほど低い音、数値が大きいほど高い音を示します。健康診断では、1,000Hzについて通常30dBの純音が聞こえるかを確認します。

厚生労働省の資料では、1,000Hzは日常会話の音域を代表する周波数として用いられています。会話には1,000Hz以外のさまざまな高さの音も含まれますが、限られた時間で多くの受診者を調べる健康診断では、代表的な周波数を使って聞こえを確認します。

そのため、1,000Hzの検査で音が聞こえたからといって、すべての高さの音を問題なく聞き取れていると確定するわけではありません。健康診断の聴力検査は、詳しい検査が必要な人を見つけるための検査として受け止めることが大切です。

4,000Hzは高い音域の聴力低下を確認するために使われる

4,000Hzは1,000Hzより高い音です。一般的な定期健康診断では、通常40dBの純音が聞こえるかを確認します。1,000Hzだけでは確認しにくい高音域の聞こえを調べることで、聴力低下を見逃しにくくします。

聴力は、すべての周波数で同じように低下するとは限りません。日常会話では大きな不自由を感じていなくても、高い周波数から聞こえにくくなる場合があります。「普段は聞こえているから聴力に問題はない」とは限らない点を押さえておきましょう。

一方で、健康診断の4,000Hz・40dBという条件は、聴力の限界を細かく測定するためのものではありません。40dBより小さな音をどこまで聞き取れるかを知りたい場合は、複数の周波数で聞こえる最小の音を測定する純音聴力検査などが必要になります。

健康診断だけでは聞こえにくさの原因まで特定できない

健康診断の聴力検査で分かるのは、主に指定された周波数と音の大きさを聞き取れたかどうかです。「所見あり」という結果だけで、難聴の原因や種類まで確定することはできません。

耳の聞こえに影響する状態は複数あり、耳の状態を確認する診察や、より多くの周波数を使った聴力検査などを組み合わせて判断する場合があります。健康診断の結果は、病名を決める診断結果ではなく、詳しい確認が必要かを考えるための情報として扱います。

健康診断で「所見あり」「要受診」「要精密検査」などの案内があった場合は、結果票に記載された指示を確認してください。聞こえにくさや耳鳴りなどの自覚症状がある場合は、健診結果だけで判断せず耳鼻咽喉科へ相談しましょう。

オージオメーター検査は左右の耳で純音が聞こえるかを調べる

オージオメーター検査は左右の耳で純音が聞こえるかを調べる

オージオメーターは、決められた周波数と音の大きさを出して聴力を調べる機器です。健康診断ではヘッドホンなどを装着し、左右の耳を分けて検査音が聞こえるかを確認します。

ヘッドホンを装着して片耳ずつ検査音を聞く

オージオメーター検査では、一般的に左右の耳へ音を分けて届けられるヘッドホンなどを装着します。検査担当者の案内に従って、音が聞こえたときにボタンを押す、手を挙げるなどの方法で反応します。

健康診断の選別聴力検査では、非常に小さな音から少しずつ大きくして聴力の限界を測るのではなく、あらかじめ設定された音を聞き取れるかを確認する方法が中心です。この違いを知っておくと、健診結果の意味を理解しやすくなります。

「音が聞こえた気がする」と予測して何度も反応する必要はありません。検査担当者の説明に従い、実際に聞こえたと感じたときに反応します。左右それぞれの結果を確認するため、片方だけ聞こえにくかった場合も結果に反映されます。

Hzは音の高さでdBは音の大きさを表す

聴力検査の結果を読むには、HzとdBの役割を分けて考える必要があります。Hzは音の高さ、dB(デシベル)は検査で提示する音の大きさや聴力レベルを表す単位です。

たとえば、一般的な定期健康診断の「1,000Hz・30dB」は、1,000Hzという高さの音を30dBの条件で聞けるか確認するという意味です。「4,000Hz・40dB」も同様に、4,000Hzの音を40dBの条件で確認します。

純音聴力検査で示されるdBHL(ヒアリングレベル)は、単純な日常生活の騒音レベルとは意味が異なります。厚生労働省のQ&Aでは、各周波数で健常者が聞こえる音を基準に0dBHLが設定され、0dBHLより小さな音まで聞こえる人ではマイナスの結果が出る場合もあると説明されています。

検査音を聞き取れる静かな環境で測定することが重要になる

聴力検査では小さな検査音を聞き取るため、周囲の話し声や機械音などが大きいと結果へ影響する可能性があります。厚生労働省の通知でも、検査場所の騒音の程度を考慮して実施することが示されています。

検査中は周囲の音に気を取られず、検査音に集中します。ヘッドホンが耳からずれているなど装着状態に違和感がある場合は、そのまま続けず検査担当者へ伝えてください。正しい条件で測定することが結果を確認するうえで重要です。

一度の健康診断で聞き取りにくかった場合でも、検査環境や当日の状態だけから原因を決めることはできません。結果票の判定と自覚症状を確認し、必要と案内された場合は再検査や耳鼻咽喉科での詳しい検査を受けましょう。

聴力検査の正常値は健康診断の選別基準と分けて考える

聴力検査の正常値は健康診断の選別基準と分けて考える

健康診断の30dB・40dBは「正常な聴力の上限」を表す数値ではありません。健康診断で一定の音が聞こえるかを確かめる選別基準と、純音聴力検査で測る聴力レベルは分けて理解する必要があります。

検査・評価 主な数値 数値の意味
一般的な定期健康診断 1,000Hz・30dB
4,000Hz・40dB
設定された純音が聞こえるかを確認する選別検査
雇入れ時健康診断 1,000Hz・30dB
4,000Hz・30dB
雇入れ時の聴力を確認する検査
純音聴力検査などで評価する聴力レベル 厚生労働省Q&Aでは平均聴力レベル25dB未満を正常聴力と説明 複数の周波数で聞こえる最小の音などを測定して評価する

出典:労働安全衛生規則の一部を改正する省令等の施行について|厚生労働省騒音性難聴に関わるすべての人のためのQ&A|厚生労働省

定期健康診断は1,000Hz30dBと4,000Hz40dBで確認する

労働安全衛生規則に基づく一般的な定期健康診断では、聴力が検査項目に含まれます。厚生労働省の通知では、オージオメーターを使い、通常1,000Hzは30dB、4,000Hzは40dBの純音で検査すると示されています。

設定された音を左右の耳で聞き取れた場合は、その選別聴力検査では問題を拾わなかったという意味になります。ただし、30dBや40dBより小さな音をどこまで聞けるのかは測定していないため、30dB・40dBをそのまま正常値と表現するのは正確ではありません。

また、定期健康診断では、45歳未満の人のうち35歳と40歳を除き、医師が適当と認めた場合に1,000Hz・4,000Hzを使う方法とは別の聴力検査へ代えられる規定があります。そのため、年齢や健診内容によって検査方法が異なる場合があります。

雇入れ時は1,000Hzと4,000Hzを通常30dBで確認する

雇入れ時健康診断でも、聴力は確認する項目の一つです。厚生労働省の通知では、雇入れ時の聴力検査はオージオメーターを使用し、通常30dBの純音で実施することが示されています。

一般的な定期健康診断では4,000Hzを通常40dBで確認するのに対し、雇入れ時では1,000Hzと4,000Hzを通常30dBで確認します。健康診断の種類によって条件が異なるため、過去の結果と比較するときは検査の種類も確認してください。

雇入れ時健康診断には聴力以外にも複数の検査項目があります。今回の主題は聴力検査のため、雇入れ時健康診断の対象者や全検査項目、費用については別記事で詳しく確認できます。

平均聴力レベル25dB未満という目安は選別検査とは意味が異なる

「聴力検査の正常値」を調べると、25dBという数値を見かけることがあります。厚生労働省の騒音性難聴に関するQ&Aでは、正常聴力の定義として平均聴力レベル25dB未満と説明されています。

ただし、平均聴力レベルは、健康診断で30dBや40dBの音を1回聞き取れたかどうかだけで決まるものではありません。純音聴力検査では複数の周波数について、聞こえる最も弱い音のレベルである「閾値(いきち)」を測定し、必要な周波数の結果から聴力を評価します。

したがって、「4,000Hz・40dBが聞こえた=聴力レベルが40dB」ではありません。健康診断の結果票を見るときは、選別検査の判定なのか、詳しい純音聴力検査で測定したdBHLの数値なのかを区別しましょう。

所見ありや聞こえにくさがある場合は結果と症状を分けて対応する

所見ありや聞こえにくさがある場合は結果と症状を分けて対応する

健康診断で所見があった場合は、結果だけで原因を決めず、結果票の指示と日常の聞こえ方を合わせて確認することが重要です。反対に、所見なしでも聞こえにくさが続く場合は耳鼻咽喉科へ相談しましょう。

健康診断の所見ありだけでは難聴の原因を特定できない

1,000Hzまたは4,000Hzの検査で所見があったとしても、健康診断だけでは原因を確定できません。選別聴力検査は、設定された音を聞き取れるかによって詳しい確認が必要な可能性を拾い上げる検査だからです。

詳しい聴力を調べる場合は、耳鼻咽喉科などで複数の周波数について聞こえる最小の音を調べる純音聴力検査が行われることがあります。耳の状態や症状に応じて、診察やほかの検査も組み合わせて原因を確認します。

結果票に「要受診」「要精密検査」などの記載がある場合は、健診を受けた施設の案内に従ってください。「日常生活では困っていない」という理由だけで放置せず、前年までの結果との変化も確認すると聴力の変化を把握しやすくなります。

突然の片耳の聞こえ低下や耳鳴りは早めに耳鼻咽喉科を受診する

突然片方の耳が聞こえにくくなった場合は、次回の健康診断まで様子を見るのではなく早めに耳鼻咽喉科を受診してください。急な聴力低下には、早期の診察や治療が重要になる病気が含まれます。

厚生労働省の情報では、突発性難聴では突然の聞こえにくさに加えて、耳閉感(耳が詰まった感じ)や耳鳴り、めまい、吐き気などを伴う場合があるとされています。発症後すぐ治療を受けないと、難聴や耳鳴りが残る可能性もあるため、早めの受診が重要です。

健康診断の聴力検査は、緊急性のある耳の症状を診断するための検査ではありません。健診結果が手元にない場合や、過去の健康診断で所見がなかった場合でも、突然の症状が出たときは症状を優先して医療機関へ相談しましょう。

所見なしでも聞こえづらさが続く場合は耳鼻咽喉科へ相談する

健康診断で「所見なし」であっても、すべての周波数の聴力や耳の病気が否定されたわけではありません。一般的な選別聴力検査では1,000Hzと4,000Hzという限られた周波数を固定された音圧で確認するためです。

会話を何度も聞き返す、テレビの音量が以前より大きくなった、片耳だけ聞こえにくい、耳鳴りや耳の詰まった感じが続くなど、日常生活で変化を感じる場合は健診結果だけで判断しないようにしてください。

厚生労働省も、聞こえにくさを感じた場合には耳鼻咽喉科の受診を案内しています。健康診断は年1回など一定の間隔で受けることが多いため、症状がある場合は次の健診を待たずに相談することが大切です。

なお、騒音の大きい作業へ継続的に従事する人では、一般の定期健康診断とは別に、業務内容に応じた聴覚管理や健康診断が必要になる場合があります。

聴力検査は30dB・40dBの判定だけでなく症状と経過まで確認する

一般的な定期健康診断の聴力検査では、オージオメーターを使い、通常1,000Hzを30dB、4,000Hzを40dBで確認します。雇入れ時健康診断では通常30dBの純音を使って聴力を確認します。

30dB・40dBは聴力そのものの正常値ではなく、健康診断で聞こえを選別するための検査条件です。所見があった場合は結果票の指示を確認し、必要に応じて複数の周波数を測定する詳しい聴力検査を受けましょう。

また、健康診断が所見なしでも聞こえにくさが続く場合や、突然片耳が聞こえにくくなった場合、耳鳴りや耳の詰まった感じなどがある場合は、健診結果だけで様子を見ず耳鼻咽喉科へ相談してください。