健康診断で心拍数や脈拍の数値を見て、基準値から外れているのか、心臓に問題があるのか不安になる方もいるでしょう。心拍数は測定時の緊張や運動などでも変化するため、1回の数値だけでは状態を判断できません。
数値が高い・低いという理由だけで病気だと考えたり、反対に症状があるのに一時的な変化だと決めつけたりすると、必要な受診を逃す可能性があります。脈拍の基準値と心拍数の目安を、測定条件と合わせて確認することが大切です。
健康診断で確認される心拍数の基準範囲、脈拍との違い、高値・低値になる主な原因を整理します。健康診断で基準範囲を外れた場合に、自宅で確認したいポイントや医療機関へ相談する状態も把握できます。
健診時の数値だけでなく、安静時の心拍数や脈の規則性、めまい・息切れなどの症状を合わせて確認すれば、再測定で様子を確認する場合と、早めに医療機関へ相談する場合を分けて行動できます。
健康診断の心拍数は45~85回/分が基準範囲
日本人間ドック・予防医療学会の判定区分では、仰向けで測定した心拍数の基準範囲は45~85回/分です。40~44回/分と86~99回/分は再検査・生活改善、39回/分以下と100回/分以上は精密検査・治療の区分に設定されています。
| 心拍数 | 判定区分 |
|---|---|
| 39回/分以下 | 要精密検査・治療 |
| 40~44回/分 | 要再検査・生活改善 |
| 45~85回/分 | 基準範囲 |
| 86~99回/分 | 要再検査・生活改善 |
| 100回/分以上 | 要精密検査・治療 |
※日本人間ドック・予防医療学会の判定区分です。医療機関や健診施設によって判定基準が異なる場合があるため、実際の結果票に記載された判定を確認してください。
脈拍の基準値と心拍数の目安は測定目的によって異なる
心拍数の目安を調べると、「45~85回/分」と「60~100回/分」の両方が見つかることがあります。数値が異なるのは、判定の目的や測定条件が同じではないためです。
日本人間ドック・予防医療学会は、人間ドックで仰向けになって測定した心拍数について45~85回/分を基準範囲としています。一方、東京大学保健センターでは、成人の安静時脈拍についておおよそ60~100回/分を基準値として案内しています。
そのため、例えば安静時の心拍数が55回/分だった場合、「60回/分未満だから直ちに異常」とは限りません。人間ドックの判定区分では45~85回/分に含まれ、運動習慣がある人では脈拍が少ないこともあります。
心拍数は数値だけで病気の有無を決めるものではありません。測定した状況、普段の数値、脈の規則性、症状の有無まで確認し、健診結果に再検査や精密検査の指示がある場合は指示に従いましょう。
心拍数と脈拍は測っているものが異なる
心拍数は、心臓が1分間に収縮した回数です。脈拍は、心臓から送り出された血液によって動脈に生じる拍動を、手首などで数えた回数を指します。健康な状態では、心拍数と脈拍数はおおむね一致します。
例えば心臓が1分間に70回規則正しく動いていれば、手首で確認する脈も通常は1分間に70回程度です。そのため、健康診断や家庭用血圧計では、心拍数と脈拍が近い意味で扱われることがあります。
ただし、不整脈(心臓の拍動の速さやリズムが乱れる状態)があると、心臓が収縮していても末梢の動脈まで十分な脈として伝わらない場合があります。回数だけでなく脈が規則的に打っているかも確認することが重要です。
脈が飛ぶ、急に速くなる、ばらばらに感じる状態が繰り返される場合は、心拍数が基準範囲内でも医療機関への相談が必要になることがあります。心電図による詳しい評価については、既存記事で確認できます。
法定の健康診断では脈拍は独立した必須項目ではない
会社で受ける定期健康診断では、労働安全衛生規則によって検査項目が定められています。既往歴や自覚症状、身長・体重、視力・聴力、胸部X線、血圧、血液検査、尿検査、心電図などが対象です。
一方、脈拍は法定健康診断の独立した検査項目として列挙されていません。そのため、すべての定期健康診断で「脈拍測定」という項目が必ず結果票に表示されるわけではありません。
健診施設によっては、自動血圧計で血圧を測る際に脈拍も同時に記録したり、診察時に脈を確認したりします。心電図検査でも心臓の拍動やリズムが確認されるため、施設ごとの検査方法によって心拍数の記録方法が異なります。
健康診断の結果票に心拍数の記載がない場合でも、それだけで検査不足とはいえません。勤務先で受ける健康診断の検査項目全体を確認したい場合は、健康診断の種類や法定項目を整理した記事も確認してください。
健康診断で心拍数が高くなる原因は一時的な変化と体調の異常に分かれる
健康診断で心拍数が高くても、直ちに心臓の病気を意味するわけではありません。運動や緊張などで一時的に上がっているのか、安静時にも高い状態が続いているのかを分けて考える必要があります。
運動や緊張の直後は心拍数が一時的に高くなる
心拍数は、体が必要とする血液量に合わせて変化します。健診会場まで急いで歩いた、階段を上った、受付時間に遅れそうで走ったといった状況では、体を動かすために心臓が速く動き、測定時の数値が高くなることがあります。
緊張や不安によって交感神経(体を活動状態にする自律神経)が働いた場合も、心拍数は増加します。普段は正常でも、病院や健診会場で測定すると心拍数が高くなる人もいます。
カフェインを含むコーヒーやエナジードリンク、喫煙なども測定値に影響する可能性があります。日本人間ドック・予防医療学会も、心拍数を測定する前は激しい運動や喫煙、カフェイン摂取を避けるよう案内しています。
直前に運動していた場合や強く緊張していた場合は、落ち着いてから再度測定すると普段の心拍数に近づくことがあります。ただし、再測定しても高い状態が続く場合は、一時的な変化だけで説明できない可能性があります。
安静時に100回/分以上が続く場合は原因を確認する
日本人間ドック・予防医療学会では、仰向けで測定した心拍数が100回/分以上の場合を「要精密検査・治療」に区分しています。東京大学保健センターでも、安静時に頻脈が続く場合は医療機関で原因を確認するよう案内しています。
心拍数が高くなる原因は心臓だけではありません。発熱、脱水、貧血、甲状腺機能の異常などによって、体が必要とする血液を送るために心拍数が増える場合があります。薬や嗜好品の影響を受けることもあります。
国立循環器病研究センターでは、明らかなきっかけがないのに突然120回/分以上になる場合などでは、病的な頻脈の可能性があると説明しています。数値が高い状態が続く場合は、健診結果だけで原因を決めつけないことが重要です。
健診で100回/分以上を指摘された場合は、結果票の判定を確認し、自宅でも安静時の脈拍を測ってみましょう。複数回測っても100回/分以上が続く、または普段より明らかに速い状態が続く場合は、医療機関へ相談してください。
脈が速いうえに動悸や息切れがある場合は症状も伝える
心拍数の高さを評価するときは、回数だけでなく症状の有無が重要です。頻脈によって心臓が十分に血液を送り出せなくなると、動悸、息切れ、胸の不快感、めまいなどが現れる場合があります。
日本循環器学会は、これまでなかった動悸や息切れ、失神、めまいなどが起こった場合には、早めに医師へ相談するよう案内しています。新しく現れた症状を心拍数と一緒に記録すると、診察時に状況を伝えやすくなります。
特に、脈が突然速くなって元に戻らない、胸の痛みや強い息苦しさがある、意識が遠のく・失神するといった状態では、次回の健康診断まで待たずに医療機関を受診してください。症状が強い場合は救急受診も考える必要があります。
症状がなく、健診会場でのみ高かった場合でも、自己判断で問題ないと決めず、結果票の再検査・精密検査の指示を確認しましょう。自宅での安静時心拍数も合わせて伝えると、普段との違いを確認できます。
健康診断で心拍数が低くても症状がなければ直ちに異常とは限らない
心拍数が低い状態は徐脈(心臓の拍動が通常より少ない状態)と呼ばれます。ただし、運動習慣がある人では心拍数が低くても症状がなく、病的な状態ではない場合があります。
運動習慣がある人は安静時心拍数が低いことがある
持久力を必要とする運動を継続している人では、心臓が1回の拍動で効率よく血液を送り出せるようになり、安静時の心拍数が少なくなることがあります。いわゆるスポーツ心臓などでみられる変化です。
日本人間ドック・予防医療学会も、心拍数が45回/分未満でも、アスリートでは徐脈がみられることがあると説明しています。そのため、健康診断で50回/分前後だったという理由だけで、心臓に異常があるとは判断できません。
重要なのは、以前から同程度の心拍数なのか、最近になって急に低くなったのかです。過去の健康診断結果や家庭で測った脈拍と比較すると、普段から低いのか、新しく生じた変化なのかを確認できます。
運動習慣があり、日常生活でめまい・失神・息切れなどがなく、健診でも再検査の指示がない場合は、まず結果票の指示に沿って経過を確認します。症状や判定に変化があれば、医療機関へ相談しましょう。
40~44回/分と39回/分以下では健診の判定区分が異なる
日本人間ドック・予防医療学会の判定区分では、心拍数40~44回/分は「要再検査・生活改善」、39回/分以下は「要精密検査・治療」です。45回/分を下回ると、基準範囲外として扱われます。
ただし、判定区分は病名を確定するものではありません。運動習慣、服用している薬、心臓の電気的な刺激が伝わる仕組みなど、複数の要因によって心拍数は低くなります。
39回/分以下だった場合は、症状がなくても結果票の精密検査指示を確認してください。40~44回/分でも、以前より明らかに低下している場合や、日常生活で体調の変化がある場合は医療機関へ伝えましょう。
健診施設によって判定方法が異なる場合もあります。インターネット上の数値だけで自己判定せず、健診結果に記載された判定区分と医師からのコメントを優先して確認してください。
心拍数が低くめまいや失神がある場合は受診を優先する
心拍数が少なすぎると、脳や全身へ必要な血液を十分に送れなくなり、めまい、ふらつき、息切れ、失神などが現れる場合があります。国立循環器病研究センターでは、一般に脈が40回/分以下になると息切れやめまいなどが起こりやすくなると説明しています。
特に、心拍数が低い状態と同時に意識が遠のく、失神する、強い息切れがある場合は、単に「脈が遅い体質」と考えず医療機関へ相談してください。突然症状が現れた場合や症状が強い場合は、早急な受診が必要です。
徐脈の原因を調べる際には、医療機関で心電図などを行い、心臓が一定のリズムで動いているかを確認する場合があります。心電図の波形や異常所見については、心電図検査の記事で詳しく扱っています。
心拍数が低いという数値だけで病名を推測する必要はありません。普段の脈拍、運動習慣、服薬状況、症状の有無を医師へ伝えることで、追加の検査が必要か判断してもらえます。
基準範囲を外れた心拍数は安静時の再測定と症状の確認が必要
健康診断で心拍数が高い・低いと指摘された場合は、安静時に再測定し、普段の数値と症状を確認することが重要です。1回の測定値だけで正常・異常を自己判断しないようにしましょう。
健診直後の1回だけではなく自宅の安静時心拍数も確認する
健康診断の心拍数は、その日の体調や移動、緊張などの影響を受けます。健診会場まで急いだ直後に測った数値と、自宅で落ち着いているときの数値が異なることは珍しくありません。
自宅で測る場合は、運動直後を避け、椅子に座るなどして落ち着いてから確認します。コーヒーなどのカフェイン飲料や喫煙の直後も避けると、安静時の状態を確認しやすくなります。
測定日時、心拍数、測定前の行動、症状を簡単に記録しておくと、健診時だけ高かったのか、日常的に高い・低い状態なのかを比較できます。家庭用血圧計で脈拍が表示される場合は、その数値を記録しても構いません。
血圧と心拍数は別の指標ですが、家庭用血圧計では同時に確認できる機種が多くあります。血圧についても健診で指摘を受けている場合は、心拍数だけでなく血圧の推移も合わせて確認しましょう。
手首の脈を15秒数えて4倍すると1分間の脈拍を確認できる
脈拍は特別な機器がなくても手首で確認できます。手のひらを上に向け、親指側の手首に反対の手の人差し指と中指を当て、軽く押して拍動を探します。
日本循環器学会では、脈を15秒間数えて4倍し、1分間の脈拍数を確認する方法を紹介しています。例えば15秒間に18回脈を感じた場合、18×4で1分間の脈拍は72回です。
回数と同時に、脈が一定の間隔で打っているかも確認します。「トン、トン、トン」と規則的なのか、途中で飛ぶ、急に間隔が詰まる、ばらばらになるといった変化があるのかを確認してください。
脈が不規則な状態を繰り返す場合は、心拍数が60~80回/分程度でも医療機関へ相談することがあります。家庭での脈拍測定は診断の代わりではないため、気になる変化が続く場合は測定記録を持参して相談しましょう。
再検査や受診を考える状態は数値と症状を組み合わせて確認する
健康診断後の対応は、心拍数だけではなく、再測定した数値、脈の規則性、症状、結果票の判定を組み合わせて決めます。特に人間ドックで39回/分以下または100回/分以上だった場合は、精密検査・治療区分に該当します。
| 状態 | 確認したいこと | 対応 |
|---|---|---|
| 健診時だけ高い | 運動・緊張・カフェインなどがなかったか | 落ち着いた状態で再測定し、結果票の指示を確認する |
| 安静時100回/分以上が続く | 発熱や動悸、息切れなどがないか | 医療機関へ相談し、原因を確認する |
| 39回/分以下 | 運動習慣や服薬、めまいなどがないか | 健診結果の精密検査指示に従う |
| 脈が不規則 | 脈が飛ぶ・急に速くなる状態を繰り返していないか | 繰り返す場合は医療機関へ相談する |
| 失神・強い胸痛・強い息苦しさがある | 意識状態や症状の強さを確認する | 健診の再検査を待たず、早急に医療機関へ相談する |
症状がある場合は、心拍数が基準範囲内でも数値だけで問題ないと判断しないことが重要です。特に新しく生じた動悸、息切れ、めまい、失神などは医師へ伝えてください。
反対に、健康診断で1回だけ基準範囲を外れたものの、自宅の安静時心拍数は普段どおりで症状もない場合があります。その場合も、健診結果に再検査や精密検査の指示が記載されていないか確認したうえで対応しましょう。
心拍数は数値だけで決めず安静時の変化と症状を合わせて確認する
日本人間ドック・予防医療学会では、仰向けで測定した心拍数45~85回/分を基準範囲としています。40~44回/分と86~99回/分は再検査・生活改善、39回/分以下と100回/分以上は精密検査・治療の区分です。
一方、一般的な成人の安静時脈拍では60~100回/分程度が目安として示されることもあります。基準値の違いは測定目的や判定方法の違いによるものなので、数値だけを比較して異常と決めつける必要はありません。
健康診断で基準範囲を外れた場合は、運動や緊張など測定前の状況を振り返り、自宅でも安静時の脈拍を確認しましょう。高い・低い状態が続く、脈が不規則、動悸・息切れ・めまい・失神などがある場合は、健診結果を持参して医療機関へ相談してください。




