健康診断や人間ドックでアミラーゼが基準値を超え、膵臓の病気ではないか、高い原因は何かと不安になっている方もいるでしょう。
アミラーゼは膵臓だけでなく唾液腺などの影響でも変動します。数値だけで原因を決めつけると、必要以上に不安になったり、必要な受診が遅れたりするおそれがあります。
この記事では、アミラーゼ検査の基準値と結果の見方、膵酵素検査の内容、アミラーゼが高い主な原因を整理します。追加で行われる検査や受診時に確認したい症状も解説します。
検査結果と症状を合わせて確認することで、経過を見られる状態と、早めに医療機関へ相談したい状態を分け、アミラーゼ高値の後に取る行動を整理できます。
アミラーゼ検査は膵臓と唾液腺由来の消化酵素を測る検査
アミラーゼ検査では、主に血液中のアミラーゼという消化酵素の活性を測定します。膵臓だけを調べる検査ではなく、唾液腺から分泌されたアミラーゼも測定値に含まれる点を押さえておく必要があります。
アミラーゼはでんぷんなどの糖質を分解する消化酵素
アミラーゼは、でんぷんなどの糖質を小さな糖へ分解する消化酵素です。体内では主に膵臓と唾液腺でつくられ、膵臓から分泌されたアミラーゼは膵液に含まれて十二指腸へ送られます。
健康診断や人間ドックで行われる血液検査では、血液中に存在するアミラーゼの活性を測ります。膵臓や唾液腺の細胞が傷ついた場合などには血液中へ流れ出る量が増え、測定値が上昇することがあります。
ただし、血清アミラーゼの値だけから、どの臓器で何が起きているのかまでは特定できません。アミラーゼ検査は膵臓の状態を確認する手掛かりの1つとして、症状やほかの検査と組み合わせて評価されます。
血清アミラーゼには膵型と唾液腺型が含まれる
血液中のアミラーゼには、大きく分けて膵臓に由来するP型と、唾液腺に由来するS型があります。通常の血清アミラーゼ検査では両方を合わせた総アミラーゼが測定されるため、高値でも膵臓由来とは限りません。
たとえば、急性膵炎では膵臓由来のアミラーゼが上昇することがあります。一方、耳下腺炎など唾液腺に炎症が生じた場合にも総アミラーゼが高くなるため、同じ検査結果でも原因となる臓器は異なります。
アミラーゼが高い場合には、アイソザイム検査(同じ働きを持つ酵素を由来別に分けて調べる検査)などを用いて、膵型と唾液腺型のどちらが増えているのか確認することがあります。総アミラーゼの数値だけで膵臓の病気と判断しないことが重要です。
高値では膵型アミラーゼなどを追加して由来を確認する
総アミラーゼが基準値を超えた場合、医療機関では数値の程度や症状、過去の検査結果を確認したうえで追加検査を決めます。膵臓からの上昇が疑われる場合には、膵型アミラーゼやリパーゼなどの膵酵素を追加することがあります。
膵型アミラーゼが増えていれば、総アミラーゼ高値のうち膵臓由来の割合が高いと考える手掛かりになります。反対に唾液腺型が主体であれば、耳下腺をはじめとした膵臓以外の原因について確認が進められます。
血液検査で原因を十分に絞れない場合や、腹痛などの症状がある場合には画像検査が行われることもあります。アミラーゼ検査は単独で病名を確定する検査ではなく、原因となる臓器を段階的に絞るために使われる検査と理解しておきましょう。
アミラーゼ検査の基準値は44〜132U/Lが共用基準範囲
日本臨床検査標準協議会(JCCLS)が示す共用基準範囲では、血清アミラーゼは44〜132U/Lです。ただし、測定方法や検査機関によって基準範囲が異なる場合があるため、実際の判定では結果票に記載された範囲を確認します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 検査項目 | アミラーゼ(AMY) |
| JCCLS共用基準範囲 | 44〜132U/L |
| 主な由来 | 膵臓・唾液腺 |
| 高値で確認される主な項目 | 膵型アミラーゼ、リパーゼ、腎機能、症状、画像検査など |
実際の判定では検査結果票に記載された基準範囲を確認する
44〜132U/LはJCCLSが示している共用基準範囲であり、すべての医療機関で同じ数値が使われるとは限りません。検査機器や測定方法などによって、医療機関や検査会社が設定する基準範囲に差が生じる場合があります。
そのため、自分の検査結果を確認するときは、インターネット上の数値だけで正常・異常を分けず、結果票に記載された基準範囲と照らし合わせます。過去にもアミラーゼを測定している場合には、今回だけ変化したのか、同程度の値が続いているのかも確認します。
基準値をわずかに超えただけで特定の病気が決まるわけではありません。反対に、基準範囲内でも症状や画像所見によって詳しい検査が必要になる場合があります。数値、過去値、体調をセットで医師へ伝えられるようにしておきましょう。
高値だけでは膵炎や膵臓がんとは診断できない
アミラーゼ高値は膵臓の異常でみられることがありますが、高値だけを根拠に急性膵炎や膵臓がんと診断することはできません。唾液腺の病気や腎機能の低下など、膵臓以外の状態でも数値は上昇します。
急性膵炎は、上腹部痛、血中または尿中の膵酵素上昇、画像検査で急性膵炎に伴う異常所見があることなどを組み合わせて診断されます。血液検査の1項目だけではなく、症状と画像所見まで含めた評価が必要です。
膵臓がんでもアミラーゼなどの膵酵素が高くなる場合がありますが、がんがあっても高くならないケースがあります。アミラーゼは膵臓がんの有無を単独で判定する検査ではありません。高値が続く場合は、原因を決めつけず医療機関で必要な検査を確認してください。
低値は進行した慢性膵炎などでみられることがある
アミラーゼ検査では高値に注目しやすいものの、低値がみられる場合もあります。慢性膵炎が進行して膵臓で消化酵素をつくる細胞が減少すると、血液中の膵酵素が低下することがあります。
一方、慢性膵炎では病状によって膵酵素が上昇する時期もあり、数値の動きは一様ではありません。膵酵素の異常だけでは慢性膵炎を正確に診断しにくいため、超音波検査やCTなどによる膵臓の形態確認が必要になる場合があります。
アミラーゼが低い場合も、結果票の数値だけから膵機能低下を断定しないようにしてください。過去の値や腹痛、体重減少、便の状態なども医師へ伝え、追加検査が必要か確認します。
膵酵素検査では目的に応じて複数の項目を組み合わせる
膵酵素検査ではアミラーゼだけでなく、膵型アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ、トリプシンなどが利用されます。すべてを一律に測定するのではなく、疑われる病気や検査目的に応じて必要な項目が選ばれます。
| 検査項目 | 主な特徴 | 検査で確認する内容 |
|---|---|---|
| 総アミラーゼ | 膵臓と唾液腺などに由来するアミラーゼを合わせて測定 | 膵臓・唾液腺などに関連した酵素上昇の有無 |
| 膵型アミラーゼ | 膵臓由来のアミラーゼを中心に測定 | 総アミラーゼ高値が膵臓由来かを確認 |
| リパーゼ | 脂肪の消化に関わる膵酵素 | 急性膵炎などが疑われる場合の膵障害の確認 |
| エラスターゼ | 膵臓から分泌される酵素 | 膵疾患を調べる血液検査の一部として使用 |
| トリプシン | たんぱく質の消化に関わる膵酵素 | 膵外分泌機能や膵疾患を調べる際に使用される場合がある |
参考:膵臓がんの検査|国立がん研究センター がん情報サービス、急性膵炎の診断と重症度判定|J-STAGE
総アミラーゼと膵型アミラーゼで高値の由来を絞り込む
健康診断などで一般的に測定される総アミラーゼは、膵臓と唾液腺などに由来するアミラーゼをまとめて測ります。そのため、総アミラーゼ高値だけでは膵臓由来か唾液腺由来かを区別できません。
膵臓由来の上昇を確認したい場合には、膵型アミラーゼやアミラーゼアイソザイムが追加されることがあります。膵型と唾液腺型の割合を調べることで、膵炎などの膵疾患を優先して調べるのか、唾液腺など別の原因を確認するのかを絞れます。
総アミラーゼが高い状態を繰り返している場合も、総量だけでなく由来を確認することが原因の切り分けにつながります。検査結果票にP-AMYや膵型アミラーゼの項目がある場合は、総アミラーゼと分けて確認してください。
急性膵炎が疑われる場合は血中リパーゼも確認される
リパーゼは脂肪を分解する膵酵素で、急性膵炎を調べる際に重要な血液検査項目です。急性膵炎診療ガイドライン2021では、急性膵炎の診断では血中リパーゼの測定が推奨され、測定が難しい場合に血中アミラーゼを測るとされています。
アミラーゼとリパーゼはどちらも膵臓の障害で上昇することがありますが、同じ動きをするとは限りません。そのため、腹痛などから急性膵炎が疑われる状況では、医師が症状や発症時期を確認しながら複数の検査結果を評価します。
アミラーゼが正常であれば急性膵炎を完全に除外できるわけではありません。発症から時間が経過すると膵酵素の上昇が目立たなくなる場合もあるため、強い腹痛などがあるときは血液検査の数値だけで受診の必要性を決めないでください。
エラスターゼやトリプシンは検査目的に応じて追加される
膵臓がつくる消化酵素には、アミラーゼやリパーゼ以外にもエラスターゼやトリプシンがあります。膵酵素検査という名称で常に同じ項目を一式測るわけではなく、検査目的に応じて組み合わせが変わります。
国立がん研究センターでは、血中膵酵素としてアミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼなどを挙げています。一方、慢性膵炎ではアミラーゼ、リパーゼ、トリプシンなどの異常が確認されることがありますが、膵酵素だけで病気を確定することはできません。
人間ドックや膵臓ドックでどの膵酵素を測るかは、施設やコースによって異なります。膵臓を詳しく調べたい場合は、血液検査だけでなく画像検査を含めてどの項目が設定されているか確認してください。
アミラーゼが高い原因は膵臓の病気だけではない
アミラーゼが高い原因には、急性膵炎などの膵疾患、唾液腺の病気、腎機能の低下、マクロアミラーゼ血症などがあります。症状と追加検査を組み合わせ、どこからアミラーゼが増えているのか確認します。
急性膵炎や慢性膵炎の変化でアミラーゼが上昇する
膵臓の細胞が傷つくと、膵臓内の酵素が血液中へ漏れ出し、アミラーゼが上昇することがあります。代表的な膵臓由来の原因の1つが急性膵炎で、上腹部痛や背中の痛み、吐き気、嘔吐、発熱などを伴う場合があります。
慢性膵炎でも、急性の炎症を合併した場合には膵酵素が一時的に上昇することがあります。また、膵管がふさがれる状態や膵臓に異常がある場合にも膵酵素が高くなることがあるため、数値が続けて高い場合は原因の確認が必要です。
膵臓がんでも血中膵酵素が高くなることがありますが、膵臓がんがあってもアミラーゼが正常な場合があり、他の病気でも高値になります。アミラーゼ高値から特定の膵疾患を自己判断せず、膵型アミラーゼや画像検査などの必要性を医師へ確認してください。
耳下腺炎など唾液腺の異常でもアミラーゼは高くなる
アミラーゼは膵臓だけでなく唾液腺でもつくられるため、耳下腺炎など唾液腺に炎症が起きた場合にも総アミラーゼが上昇します。膵臓の症状がなくても高値になる理由の1つです。
唾液腺由来のアミラーゼが増えている場合、膵型アミラーゼではなくS型と呼ばれる唾液腺型の割合が高くなります。耳やあごの周辺に腫れや痛みがある場合には、アミラーゼの値と合わせて症状を医師へ伝えることが原因確認に役立ちます。
総アミラーゼだけを見ても膵臓と唾液腺のどちらに由来するかは分かりません。高値でも腹部症状がない場合は、アイソザイム検査などで由来を確認するケースがあります。膵臓の検査だけに絞らず、症状に合った原因を調べることが必要です。
腎機能低下やマクロアミラーゼ血症でも高値が続くことがある
血液中のアミラーゼは体外へ排泄される過程で腎臓の影響を受けます。腎機能が大きく低下している場合には、膵臓に急性の炎症がなくても血清アミラーゼが高くなることがあります。
マクロアミラーゼ血症も、膵炎以外で高値が続く原因の1つです。マクロアミラーゼは、アミラーゼが免疫グロブリンなどと結合して分子が大きくなった状態で、尿へ排泄されにくくなるため血液中のアミラーゼが高くなります。
症状が乏しいままアミラーゼ高値が持続するときには、腎機能やアミラーゼアイソザイム、尿中アミラーゼなどを追加して原因を調べる場合があります。高値が長期間続いていても、膵臓の病気だけを想定せず原因を整理することが大切です。
アミラーゼが高いときは症状と追加検査を合わせて確認する
アミラーゼが基準値を超えていた場合は、数値の高さだけで対応を決めず、過去値、腹部症状、膵型アミラーゼなどを確認します。強い腹痛や嘔吐などを伴う場合は、健診後の経過観察を待たず早めの受診が必要です。
過去の数値と膵型アミラーゼや腎機能を確認する
自覚症状がなく健康診断でアミラーゼ高値を指摘された場合は、まず今回の数値だけでなく過去のアミラーゼ値と比較します。今回初めて上昇したのか、以前から同程度の高値が続いているのかで確認する内容が変わります。
医療機関では必要に応じて、膵型アミラーゼ、リパーゼ、腎機能を示すクレアチニンやeGFRなどを確認します。アミラーゼアイソザイムを測定すれば、膵臓由来と唾液腺由来のどちらが増えているのかを詳しく調べられます。
結果票、過去の健診結果、現在の症状をまとめて持参すると、数値の経過を確認しやすくなります。自己判断で食事や飲酒だけを変更して様子を見るのではなく、再検査や追加検査を指示されている場合は指定された時期に受診してください。
上腹部痛や背部痛と嘔吐がある場合は早めに受診する
アミラーゼ高値に加えて、強い上腹部痛、背中の痛み、吐き気や嘔吐、発熱などがある場合は早めに医療機関を受診してください。急性膵炎を含め、速やかな診断や治療が必要な病気が隠れている可能性があります。
急性膵炎は腹痛で発症するケースが多く、胆石がある方の腹痛や、多量の飲酒後に生じた腹痛などでは特に注意が必要です。ただし、似た症状は胃や胆道、尿路など別の病気でも起こるため、症状だけで原因を決めることもできません。
痛みが強い、繰り返し嘔吐する、全身状態が悪いなどの状態では、健診結果の再検査日まで待たず医療機関へ連絡してください。アミラーゼの値が基準範囲内であっても、強い症状がある場合は数値だけを理由に受診を見送らないようにしましょう。
原因を絞れない場合は腹部エコーやCTなどで膵臓を確認する
血液検査だけではアミラーゼ高値の原因を特定できない場合、症状やほかの検査結果に応じて画像検査が行われます。腹部エコーやCT、MRIなどを使い、膵臓の形や周囲の状態を確認することがあります。
腹部エコーは体外から超音波を当てて腹部臓器を観察する検査ですが、膵臓は腹部の奥に位置するため、胃や腸のガスによって一部が見えにくい場合があります。必要に応じてCTやMRIなど、別の画像検査が追加されます。
アミラーゼ検査の記事では画像検査の詳細までは扱わず、血液検査で異常が続いた後に画像で膵臓を確認する場合があることを押さえておきましょう。腹部エコーの検査内容や検査で確認できることは、既存記事で詳しく確認できます。
アミラーゼ検査は数値だけでなく由来と症状を合わせて判断する
アミラーゼ検査では、JCCLSの共用基準範囲として44〜132U/Lが示されています。ただし、実際の判定では検査結果票に記載された基準範囲を確認し、高値か低値かだけで病名を判断しないことが重要です。
アミラーゼは膵臓と唾液腺の両方に由来するため、高値の場合は膵型アミラーゼ、リパーゼ、腎機能などを追加して原因を調べることがあります。必要に応じて腹部エコーやCTなどの画像検査も組み合わせます。
- JCCLSのアミラーゼ共用基準範囲は44〜132U/L
- 実際の判定では検査結果票に記載された基準範囲を確認する
- 高値の原因には膵疾患だけでなく唾液腺や腎機能などもある
- 総アミラーゼ高値では膵型アミラーゼやリパーゼなどを追加する場合がある
- 強い上腹部痛、背部痛、嘔吐、発熱などがあれば早めに医療機関を受診する
症状がなくても高値が続く場合や再検査を指示されている場合は、過去の結果を持参して医療機関へ相談してください。強い腹痛や嘔吐などがある場合は数値だけで経過を見ず、早めに診察を受けましょう。

