健康診断で胸部X線検査を受けることになり、「何がわかるのか」「レントゲンで病気まで診断できるのか」と気になっている方もいるでしょう。検査の特徴を知らないままだと、結果の意味を正しく捉えられないことがあります。
また、女性はブラジャーや服の装飾が撮影に影響する場合があり、被ばく量を不安に感じる方も少なくありません。この記事では、胸部X線検査の内容からわかること、服装、被ばく、検査後の対応まで順番に解説します。
胸部X線検査は肺や心臓など胸部の異常の兆候を確認する検査
胸部X線検査とは、胸にX線を照射して体内を平面画像として撮影する検査です。「胸部レントゲン」と呼ばれることもあり、健康診断や人間ドック、医療機関での診察などで広く行われています。
主に肺を確認する検査というイメージがありますが、実際には心臓、大動脈、胸膜、縦隔、骨など、胸部に含まれる複数の部位を確認できます。
X線の通りやすさの違いを利用して胸部を画像にする
胸部X線検査では、体を通過するX線の量の違いを利用して胸の内部を画像化します。空気を多く含む肺はX線が通りやすいため黒っぽく、骨などX線が通りにくい部分は白っぽく写ります。
この濃淡や臓器の形、通常とは異なる影などを確認し、胸部に病気を疑う変化がないかを調べるのが胸部X線検査の役割です。注射や造影剤を使用せずに撮影でき、体の外側から短時間で検査できます。
ただし、X線写真に写るのは立体的な胸部を重ね合わせた平面画像です。そのため、「影がある=特定の病気」と単純には決まりません。画像の特徴や過去の画像との変化、症状、ほかの検査結果などを組み合わせて医師が評価します。
健康診断や人間ドックなど幅広い場面で行われる
胸部X線検査は、健康診断や人間ドックのほか、咳や痰、息苦しさ、胸の痛みなどがあり、肺や胸部の状態を調べる必要がある場合にも行われます。健康診断では、自覚症状がない段階で胸部の変化を確認する目的があります。
厚生労働省も、結核をはじめとする疾患の早期発見という観点から胸部X線検査について案内しています。健康診断で受ける場合は、胸部X線だけで健康状態を評価するのではなく、問診や身体測定、血液検査などの結果とあわせて確認されます。
健康診断全体でどのような検査を受けるのかを知りたい場合は、胸部X線検査だけでなく、健診項目全体を確認しておくと当日の流れを把握できます。
入社時に受ける健康診断については、必要な検査や受診時期などを別の記事で詳しく解説しています。
胸部CTより簡便だが細かな病変の確認には限界がある
胸部X線検査と胸部CT検査は、どちらもX線を利用しますが、得られる画像が異なります。胸部X線は胸全体を平面画像として確認するのに対し、CTは体の周囲からX線を照射し、胸部を断面画像として詳しく確認します。
胸部X線検査では、肋骨や血管、心臓などが重なって写るため、小さな病変や重なった位置にある病変を確認しにくい場合があります。胸部X線だけですべての肺疾患や肺がんを発見できるわけではありません。
一方、短時間で胸部全体を確認できることから、健康診断などのスクリーニング(症状のない人も含めて異常の可能性を調べる検査)で広く利用されています。異常が疑われた場合には、必要に応じて胸部CTなど、より詳しい検査へ進みます。
胸部レントゲンでわかることは肺や心臓などの異常の兆候
胸部レントゲンでは、主に肺、心臓、大動脈、胸膜、縦隔、骨などを確認できます。ただし、確認できるのは病気そのものではなく、病気によって生じる可能性がある「影」や「形の変化」などです。
| 確認する主な部位 | 見つかることがある異常 |
|---|---|
| 肺 | 肺炎、結核、肺がん、気胸などを疑う影や変化 |
| 胸膜 | 胸水、胸膜の肥厚・癒着など |
| 心臓 | 心臓の影の拡大など |
| 大動脈・縦隔 | 拡大や形の変化など |
| 骨 | 脊椎の変形や一部の骨折など |
肺炎や結核や気胸など肺の異常が見つかることがある
胸部X線検査で中心的に確認されるのが肺です。肺炎による炎症、結核、気胸、胸水などがあると、正常な肺とは異なる影や肺の広がり方の変化として写ることがあります。
たとえば気胸は、肺から空気が漏れて肺が縮んだ状態です。胸部X線では肺の輪郭や胸腔内の空気の状態を確認し、気胸を疑う所見がないか評価します。胸水では、肺の周囲に液体がたまったことによる変化がみられる場合があります。
胸部X線検査は、病名を確定する検査ではなく「詳しく調べる必要がある変化」を見つける役割があります。異常の種類や症状によってはCT、血液検査、喀痰検査などが追加されます。
肺がんを疑う影がないかを確認する
胸部X線検査は、肺がん検診でも利用される検査です。肺全体を撮影し、肺がんを疑う異常な影がないかを確認します。国立がん研究センターでも、胸部X線検査は肺にがんを疑う影がないか確認する検査として案内されています。
ただし、胸部レントゲンで影が見つかっただけでは肺がんとは診断できません。炎症の跡や良性の病変、正常な血管や骨の重なりなどが影のように見えることもあります。
反対に、肺がんがあっても、大きさや位置によって胸部X線では確認しにくい場合があります。肺がんが疑われる場合には、胸部CTで病変の大きさや場所などを詳しく確認し、必要に応じて細胞や組織を調べて診断します。
心臓や大動脈など肺以外の変化が見つかることもある
胸部X線では肺だけでなく、心臓や大動脈、脊椎なども画像に含まれます。そのため、心臓の影が通常より大きく見える心拡大や、大動脈の形の変化、脊椎の曲がりなどが指摘されることがあります。
ただし、胸部X線で確認しているのは主に臓器の形や大きさです。たとえば心臓が大きく写っていても、その画像だけで心臓の機能や原因となる疾患まで確定することはできません。
撮影時に十分息を吸えていなかった場合や、体の向きによっても見え方が変わることがあります。健康診断の結果に所見が記載されていた場合は、所見名だけで病気を自己判断せず、判定区分もあわせて確認しましょう。
胸部X線検査の内容は準備してから息を止めて撮影する流れ
胸部X線検査は、着替えや撮影準備をしたあと、撮影装置の前で姿勢を整え、技師の指示に合わせて呼吸を止めて撮影するのが一般的です。撮影そのものは短時間で終了します。
撮影前に胸周辺の金属や装飾品を外す
検査前には、胸部の画像に写り込む可能性があるものを外します。ネックレス、ボタン、ファスナー、金属やプラスチックを使用した下着、湿布、カイロ、エレキバンなどが代表的です。
これらを外す理由はX線そのものが危険になるからではありません。衣類や装飾品が画像上の影として写り、本来確認したい肺や心臓と重なる可能性があるためです。施設によっては専用の検査着へ着替えます。
胸部X線検査単独であれば、胃の検査のように食べ物を撮影する検査ではありません。ただし、健康診断では血液検査や胃の検査などを同日に受ける場合があります。食事や飲み物については、胸部X線だけで判断せず、受診する健診施設から届いた案内を優先してください。
装置に胸を当てて大きく息を吸い数秒間止める
健康診断の胸部X線では、立った状態で撮影装置に胸を近づけ、診療放射線技師が正しい姿勢になるよう調整します。肩や腕の位置について指示を受ける場合もあるため、そのまま指示に従いましょう。
撮影時には「大きく息を吸って止めてください」などと指示されます。肺を十分に広げた状態で撮影することで、肺野(X線写真上で肺として確認する範囲)を観察しやすくするためです。
X線が照射される時間は非常に短く、撮影中に痛みが生じる検査ではありません。ただし、姿勢を保つことや息を止めることが難しい場合は無理をせず、撮影前に診療放射線技師へ伝えてください。
撮影後は通常そのまま次の検査や日常生活へ戻れる
胸部X線検査では、通常の単純撮影であれば造影剤や薬を使用しません。そのため、撮影が終わった後に胸部X線検査そのものを理由とした食事や運動などの制限が設けられることは一般的ではありません。
健康診断では、撮影後に血液検査や心電図など別の検査へ進むことがあります。その場合は健診全体の順番やスタッフの案内に従ってください。検査時間も撮影枚数や施設の運用によって異なります。
また、再撮影を指示されても、直ちに病気が見つかったという意味ではありません。姿勢、呼吸、衣類の写り込みなどによって画像を確認しにくく、もう一度撮影することもあります。気になる場合は再撮影の理由をスタッフへ確認できます。
女性は胸部レントゲンで影になりにくい服装を選ぶ
女性が胸部レントゲンを受ける場合は、下着や衣服の金具、装飾、髪の毛などが画像へ写り込まないよう準備しておくと、撮影前の着替えを減らせます。
ただし、着用したまま撮影できる衣類の基準は施設によって異なります。受診先から服装について指定されている場合は、その案内を優先してください。
薄手で無地のTシャツは撮影時に対応しやすい
胸部X線検査を受ける日の服装としては、薄手で装飾のない無地のTシャツが対応しやすい服装です。東京大学保健センターでも、健診時には薄手でワンポイントやロゴのない無地のTシャツまたは肌着を案内しています。
一方、厚手のプリント、刺繍、ビーズ、スパンコール、ボタン、ファスナーなどがある衣類は、画像へ写り込む可能性があります。施設によっては撮影前に脱ぐ、または検査着へ着替えるよう求められます。
ワンピースは上半身だけを着替えにくいため、健診施設によって避けるよう案内されている場合があります。上下が分かれた服を選んでおくと、上半身のみ着替える際にも対応しやすくなります。
ブラジャーはワイヤーやホック以外の部品にも注意する
女性の場合、ブラジャーに使われるワイヤー、ホック、アジャスターなどが画像へ写ることがあります。そのため、多くの施設では撮影時にブラジャーを外すよう案内しています。
「ノンワイヤーなら必ず着けたまま撮影できる」とも限りません。プラスチック製のアジャスターや厚いカップ、ゴム、装飾なども施設によっては脱衣の対象になります。ブラトップやスポーツブラについても扱いは施設ごとに異なります。
着替えをできるだけ簡単にしたい場合は、受診先の服装案内を事前に確認し、薄手の無地Tシャツを用意しておくと安心です。当日判断できない下着や衣類がある場合は、自分で決めず受付や診療放射線技師へ確認しましょう。
長い髪はまとめ妊娠の可能性があれば撮影前に伝える
肩にかかる長い髪も、胸部X線画像へ写り込む場合があります。健診施設によっては、髪を頭の高い位置でまとめるよう案内しています。髪が長い方は、金属を使用していないヘアゴムを持参しておくと対応できます。
また、妊娠中または妊娠している可能性がある場合は、X線撮影を受ける前に必ずスタッフへ伝えてください。健康診断として撮影を延期するのか、医学的な必要性を踏まえて実施するのかは状況によって異なります。
「妊娠しているか分からないからそのまま受ける」「X線だから必ず受けない」と自己判断するのではなく、検査目的や妊娠の可能性を伝えたうえで医師や診療放射線技師へ確認することが大切です。
胸部X線検査の被ばく量は比較的少なく必要性と線量の両方を考える
胸部X線検査では放射線を使用するため、被ばくが生じます。「健康診断で毎年受けても大丈夫なのか」と不安になる方もいますが、検査の必要性と実際の線量を分けて考えることが重要です。
胸部X線の被ばく量は撮影条件によって異なる
放射線による体への影響を考える際には、実効線量(臓器ごとの影響を考慮して全身への影響の大きさを表した線量)が用いられます。日本医学物理学会の資料では、胸部X線の正面撮影について実効線量0.02〜0.3mSvが示されています。
ただし、「胸部レントゲンは必ず○mSv」と固定されているわけではありません。使用する装置、撮影方向、撮影枚数、体格、撮影条件などによって実際の線量は変わります。
そのため、異なるWebサイトで0.02mSv、0.05mSv、0.06mSvなど別の数字を見ても、直ちにどれかが誤っているとは限りません。被ばくについて具体的に知りたい場合は、実際に撮影を行う医療機関へ確認するのが確実です。
医療被ばくでは検査の必要性と必要最小限の線量が重視される
医療で放射線を使用するときは、単に「放射線量をゼロにする」ことを目指すわけではありません。厚生労働省では医療被ばくについて、「正当化」と「最適化」という考え方が重要とされています。
正当化とは、検査によって得られる利益が放射線によるリスクを上回るかを考えて、検査の必要性を判断することです。最適化とは、診断に必要な画像を得られる範囲で被ばく線量を適切に抑えることを指します。
つまり、「少しでも被ばくするなら受けない」という考え方でも、「医療検査なら何回受けても気にしなくてよい」という考え方でもありません。検査を受ける目的を確認し、その目的に必要な範囲で撮影することが重要です。
過去の画像検査や被ばくへの不安は医師や技師へ伝える
最近ほかの医療機関で胸部X線やCTを受けた場合は、そのことを医師へ伝えておきましょう。過去の画像や検査履歴を確認できれば、新たな撮影が本当に必要かを考える際に役立つ場合があります。
特にCTは胸部X線と同じX線を使用しますが、撮影方法や得られる情報、被ばく線量が異なります。「以前レントゲンを撮ったからCTも同じ」「CTを撮ったから胸部X線は絶対不要」と自己判断するのは避けましょう。
被ばくが心配な場合は、「なぜこの検査が必要なのか」「過去に受けた検査で代用できないか」を医師へ確認できます。検査の必要性を理解したうえで受けることで、不安を抱えたまま撮影へ進むことを避けられます。
胸部X線で異常を指摘されても病気が確定したとは限らない
健康診断の胸部X線で「異常あり」「要精密検査」などと判定されると、肺がんなどの重大な病気を不安に感じる方もいるでしょう。しかし、胸部X線の所見だけで病名が確定するわけではありません。
要精密検査はさらに詳しく確認する必要があるという意味
胸部X線では、肺、血管、骨など複数の構造が1枚の画像上で重なります。そのため、正常な構造の重なりなのか病気による変化なのか、X線写真だけでは判断しきれないことがあります。
健康診断で「要精密検査」と判定された場合は、病気が確定したという意味ではなく、詳しい検査で確認する必要がある状態と考えましょう。過去の肺炎などによる古い影が確認されるケースもあります。
一方で、自己判断で「きっと問題ない」と放置するのも避ける必要があります。健診結果に再検査や医療機関受診の指示が記載されている場合は、その判定に沿って受診してください。受診時には健康診断の結果票を持参すると経緯を共有しやすくなります。
必要に応じて胸部CTなどで影の位置や大きさを詳しく確認する
胸部X線で異常な影が確認された場合、精密検査として胸部CTが行われることがあります。CTでは胸部を断面画像として確認できるため、X線写真よりも病変の場所や大きさなどを詳しく評価できます。
国立がん研究センターでも、胸部X線などで肺がんが疑われた場合には胸部CTを行い、病変の大きさや場所などを確認すると説明しています。さらに必要であれば、気管支鏡検査などで細胞や組織を採取して診断を確定します。
「胸部X線で影がある→肺がん」という流れではありません。まず画像を詳しく調べ、必要に応じて別の検査を組み合わせ、何によって生じた影なのかを確認していきます。
異常なしでも症状が続く場合は健康診断の結果だけで判断しない
胸部X線は胸部全体を短時間で確認できる一方、正常な骨や血管などが重なって写るため、すべての病変を確認できる検査ではありません。小さな病変や場所によっては、胸部X線で確認しにくい場合があります。
そのため、健康診断で「異常なし」と判定されたとしても、咳や痰、血痰、息苦しさ、胸の痛みなど気になる症状が続いている場合は、健診結果だけを理由に受診を控えないようにしましょう。
健康診断は症状のない人も含めて異常の可能性を調べるものであり、現在起きている症状を診断するための診察とは役割が異なります。症状がある場合は医療機関へ相談し、必要な検査について医師の診察を受けてください。
胸部X線検査はわかる範囲と服装や被ばくを理解して受けよう
- 胸部X線検査は肺や心臓、大動脈などを平面画像で確認する検査
- 肺炎、結核、気胸、胸水、肺がんなどを疑う変化が見つかることがある
- 胸部X線だけで病名が確定するわけではなく、必要に応じてCTなどを行う
- 女性は金属や装飾のない薄手の無地Tシャツを用意すると対応しやすい
- ブラジャーや装飾品は撮影時に外す場合があり、施設の案内を優先する
- 妊娠中または妊娠の可能性がある場合は撮影前にスタッフへ伝える
- 胸部X線の被ばく線量は撮影条件によって異なり、必要性と線量の最適化の両方を考える
胸部X線検査は、短時間で胸部全体を確認できる一方、平面画像であるため確認できる範囲には限界があります。「異常あり」「異常なし」という結果だけを見るのではなく、検査の特徴を理解して結果を受け止めることが重要です。
受診前は服装や妊娠の可能性を確認し、受診後に再検査や精密検査を指示された場合は、そのままにせず医療機関へ相談しましょう。被ばくについて不安がある場合も、検査を自己判断で中止せず、撮影の目的や必要性を医師や診療放射線技師へ確認してください。