病院で問診票の記入を促されても、「症状をどこまで詳しく書けばよいか」「病名や薬の名前を正確に思い出せない」と手が止まる方もいるでしょう。
問診票を詳しく書こうとして長文になったり、反対に「頭痛」「腹痛」だけで済ませたりすると、診察時に確認すべき内容が増えます。分からない情報を推測して記入することも避ける必要があります。
問診票の役割と書き方を押さえ、症状・既往歴・服薬状況などを項目ごとの記入例に沿って整理すると、受診時に伝えるべき情報が明確になります。
問診票とは診察や健診の前に健康状態を伝えるための書類
問診票は、現在の症状や過去の病気、服用している薬などを医療機関へ伝えるための書類です。紙だけでなく、受診前にスマートフォンやパソコンから入力するWeb問診を採用している医療機関もあります。
症状や既往歴など診察に必要な情報を整理して伝える
問診票では、現在困っている症状のほか、既往歴(これまでにかかった病気)、手術歴、現在治療している病気、服用している薬、アレルギーなどを尋ねられることがあります。
症状については、「頭が痛い」といった症状名だけではなく、いつから・どこに・どのような症状があるかを確認する形式が一般的です。医療機関によっては、症状が始まったきっかけや変化、以前に同じ症状で治療を受けた経験なども記入します。
問診票は、医学的に正しい言葉を書くための試験ではありません。自分で病名を判断して「片頭痛だと思う」「胃炎だと思う」と書くより、「3日前から右側の頭がズキズキ痛む」など、実際に起きていることを記載すると状況を伝えやすくなります。
書く内容に迷った場合は、診断名を推測するのではなく、自分で確認できる事実を整理しましょう。症状の名前が分からなくても、場所・始まった時期・感じ方・変化を記載できます。
医師は問診票の内容をもとに必要な情報を追加で確認する
問診票を書いたからといって、記入した内容だけで診察が完結するわけではありません。問診票に記載された情報を確認したうえで、医師や医療スタッフから症状の経過や服薬状況などを追加で尋ねられることがあります。
例えば「1週間前から腹痛」と記載した場合、診察では痛む場所、食事との関係、痛みが続く時間、発熱や吐き気の有無など、診療に必要な内容を追加で確認される場合があります。
最初からすべてを完璧に説明しようとする必要はありません。まずは問診票の質問へ事実を記載し、書ききれない内容や補足したいことは診察時に伝えましょう。
一方で、過去の病気や現在使用している薬など、診察室で突然聞かれると思い出しにくい情報は事前に確認しておくと伝え漏れを減らせます。お薬手帳や過去の検査結果など、確認できる資料を利用してください。
健康診断では生活習慣を含む質問が設けられることがある
健康診断や人間ドックの問診票では、一般の外来診療とは質問項目が異なる場合があります。既往歴や自覚症状のほか、服薬、喫煙、飲酒、運動、食習慣、睡眠などについて回答する形式があります。
厚生労働省が示している一般健康診断問診票でも、服薬歴や既往歴、喫煙、体重の変化、運動習慣、食事、飲酒、睡眠などに関する項目が設定されています。何を聞かれるかは受診する健診や医療機関によって異なるため、届いた問診票の質問に沿って回答してください。
生活習慣について尋ねられた場合も、「良く見せよう」と実態より少なく記入する必要はありません。例えば飲酒頻度を聞かれたら、実際に飲酒する日数や量を、問診票で指定された単位に合わせて記載します。
回答方法が分からない質問や自分が該当するか判断できない項目がある場合は、適当にチェックせず、受診する医療機関へ確認しましょう。
問診票の書き方は事実を短く具体的にまとめる
症状欄では長い説明を書くことより、「いつから・どこが・どのように」を具体化することが重要です。必要に応じて程度・頻度・変化を加えると、症状の経過を整理できます。
- いつから症状があるか
- 身体のどこに症状があるか
- どのような症状か
- どの程度・どのくらいの頻度で起こるか
- 始まってから症状がどう変化したか
症状はいつから・どこが・どのようにの順で書く
症状欄の書き方で迷ったら、まず「いつから」「どこが」「どのように」の3点を整理します。「頭痛があります」だけではなく、「3日前から右側のこめかみがズキズキ痛む」のように書くイメージです。
正確な日時を覚えていない場合は、無理に日付を決める必要はありません。「1週間ほど前」「先月中旬ごろ」「3か月くらい前から」など、自分が覚えている範囲で時期を示します。
身体の場所も、「お腹」だけではなく「みぞおち」「右下腹部」のように分かる範囲で具体化します。ただし、自分で臓器を推測して「胃が痛い」「腎臓が痛い」と決めつけず、実際に痛みを感じている位置を書く方が状況をそのまま伝えられます。
痛みや違和感の表現に医学用語は必要ありません。「ズキズキする」「締め付けられる感じ」「チクチクする」「重い感じ」など、自分が感じている言葉を使いましょう。
程度や頻度と症状の変化を付け加える
症状の状態をもう少し詳しく伝えられる場合は、程度や頻度を付け加えます。「時々痛い」より「1日に3回ほど、10分程度痛む」のように回数や時間を書けると、症状の起こり方が伝わります。
痛みの程度を数値で尋ねる問診票では、指定された尺度に沿って回答してください。数値欄がない場合は、「仕事はできるが気になる」「痛くて夜に目が覚める」など、普段の生活にどの程度影響しているかを書く方法もあります。
また、「最初より強くなっている」「昨日から少し軽くなった」「食後に起こりやすい」「階段を上ると出る」など、時間経過や行動との関係が分かる場合は一緒に書きます。
一度に多くの情報を文章へ詰め込む必要はありません。「開始時期→症状→頻度→変化」の順に並べれば、短い文章でも経過を整理できます。
複数の症状は一番困っているものから整理する
複数の症状がある場合、すべてを1文につなげると分かりにくくなります。まず現在最も困っている症状を書き、その後に関連する症状を分けて記載しましょう。
例えば、「頭痛、吐き気、肩こり、眠れない」とだけ並べるのではなく、「一番困っている症状は頭痛。3日前から続いている。頭痛が強いときに吐き気もある」のように整理します。
症状ごとに始まった時期が違う場合は、それぞれの時期を書き分けます。半年続いている肩こりと当日始まった強い頭痛を同じ時期からあるように書くと、実際の経過とは異なる情報になってしまいます。
記入欄が小さく書ききれない場合は、特に伝えたい症状を優先し、「ほかにも症状あり」などと記載して診察時に補足する方法があります。別紙やメモを持参してよいかは医療機関によって異なるため、必要に応じて受付で確認してください。
問診票の記入例を項目別に確認する
問診票の質問は医療機関によって異なりますが、症状・既往歴・服薬状況など、繰り返し確認される項目があります。診断名を考えるのではなく、自分が確認できる事実を書くことを意識してください。
症状欄は時期と状態が伝わるように記入する
症状欄では、「頭痛」「腹痛」「めまい」と症状名だけを書くより、始まった時期や症状の特徴を組み合わせます。以下は書き方をイメージするための記入例です。
| 症状 | 記入例 |
|---|---|
| 頭痛 | 3日前から右側のこめかみがズキズキ痛む。1日に2〜3回あり、30分ほど続く。 |
| 腹痛 | 昨日の夕食後からみぞおちが重く痛む。食後に強くなり、吐き気も少しある。 |
| せき | 1週間ほど前から乾いたせきが出る。夜と朝に多く、昨日から回数が増えている。 |
| めまい | 3日前から立ち上がったときにふらつく。数十秒ほどで治まり、1日に数回ある。 |
記入例と同じ情報を必ず書くという意味ではありません。症状によって必要な情報は異なりますし、分からない項目を推測して埋める必要もありません。
覚えている範囲の事実を具体化することを優先し、医師から追加で聞かれた内容へ診察時に答えましょう。
既往歴や手術歴は病名と時期と現在の状態を書く
既往歴とは、これまでにかかった病気の履歴です。問診票では、過去に治療した病気や入院・手術の経験、現在も治療を続けている病気などを尋ねられる場合があります。
書く欄がある場合は、「高血圧」だけではなく、「2022年ごろから高血圧で治療中」のように、病名・時期・現在治療中かどうかを整理すると伝わりやすくなります。
| 確認される内容 | 記入例 |
|---|---|
| 現在治療中の病気 | 2022年ごろから高血圧で通院中 |
| 過去に治療した病気 | 2019年に肺炎で入院、現在は通院なし |
| 手術歴 | 2021年に虫垂炎の手術 |
| 時期を正確に覚えていない | 10年ほど前に胆石で入院、詳しい年は不明 |
病名や治療時期を正確に覚えていない場合は、分かる範囲まで記入します。自分の記憶だけで別の病名を推測するより、「病名不明」「時期不明」としたうえで、過去の診療情報など確認できる資料があれば持参してください。
薬やアレルギーと飲酒喫煙は実際の状況を記入する
服薬欄では、現在使用している薬について記入します。薬の正式名称を覚えていなければ、お薬手帳や薬剤情報提供書、薬の袋などを確認しましょう。処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントについて質問する医療機関もあります。
アレルギーについては、薬や食べ物などで症状が出た経験を尋ねられる場合があります。原因が分かっている場合は対象となる薬や食べ物と症状を記載し、分からなければ自己判断で原因を決めないようにしてください。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 服用中の薬 | 薬名を記載。分からない場合は「お薬手帳持参」と記入 |
| 薬のアレルギー | ○○を服用した際にじんましんが出た |
| 飲酒 | 週2日程度、1回にビール500mL程度 |
| 喫煙 | 現在1日10本程度 |
飲酒や喫煙は、実際の頻度や量を問診票の指定に沿って回答します。健診では生活習慣に関する質問が結果の確認や保健指導などに用いられる場合があるため、実際とは異なる内容に調整する必要はありません。
問診票で迷ったときは推測せず確認できる情報を持参する
問診票をすべて暗記した情報だけで埋める必要はありません。病名・薬・過去の検査結果などを思い出せない場合は、推測せず、確認できる資料を利用することが大切です。
薬名が分からない場合はお薬手帳などを確認する
服用している薬について尋ねられても、「血圧の薬」「白い錠剤」のようにしか覚えていないことがあります。その場合は、薬名を推測して書くのではなく、お薬手帳や薬剤情報提供書を確認してください。
薬の現物や薬袋から確認する場合は、本人に処方されたものか、現在も使用している薬かを確かめます。過去に飲んでいた薬と現在の薬を混同しないようにしましょう。
健康診断や検査を受けるからといって、常用薬を自己判断で中止しないでください。検査によって服薬方法の指示が異なるため、事前案内を確認し、不明な場合は主治医または受診する医療機関へ問い合わせます。
サプリメントや市販薬についても、問診票に記入欄がある場合は商品名などを確認して記載します。何を申告すべきか分からない場合は、現物やパッケージの写真を準備して受診先へ確認する方法もあります。
なしと不明は意味が異なるため使い分ける
「既往歴」「アレルギー」「服薬」などの質問で迷った場合、「なし」と「不明」は分けて考えます。自分が確認できる範囲で該当するものがなければ「なし」、存在する可能性はあるものの内容を確認できない場合は「不明」と記載します。
例えば、過去に薬を飲んで発疹が出た経験は覚えているものの、薬名を思い出せない場合、「薬アレルギーなし」とするのではなく、「薬名不明、以前服用後に発疹あり」のように分かる範囲を記載できます。
一方で、質問の意味そのものが分からない場合は、自分なりに解釈して回答しないようにしてください。受付や医療スタッフへ質問し、どの情報を記載すればよいか確認しましょう。
Web問診では入力必須項目になっていることもあります。「不明」という回答項目がない場合や入力方法が分からない場合は、送信前に受診先へ問い合わせると誤った回答を避けられます。
健診や人間ドックでは受診先から届いた案内を優先する
健康診断や人間ドックでは、受診日の前に問診票や検査キット、注意事項が送られてくることがあります。Web問診の場合は入力期限が指定されることもあるため、受診直前ではなく、届いた時点で内容を確認してください。
問診票に記入した後で体調が変化した場合は、当日の状態を受付や医療スタッフへ伝えます。特に妊娠の可能性、服薬状況の変更、発熱など、検査内容に関係する可能性がある情報は、事前に記入していなかった場合でも当日に申告してください。
雇入れ時健康診断では、問診票に加えて会社指定の診断書用紙や本人確認書類などが必要になる場合があります。検査項目や服装、食事、持ち物までまとめて確認したい場合は、雇入れ時健診の受診準備も確認してください。
また、突然の激しい頭痛、急な息切れや呼吸困難、意識がおかしい、大量の出血など緊急性が疑われる状態では、問診票を最後まで書くことを優先しないでください。医療機関内であればすぐにスタッフへ伝え、院外で重大な症状が起きている場合は119番への連絡など必要な対応を取ります。
問診票は診察に必要な事実を時系列で短く書く
問診票とは、現在の症状や既往歴、服薬状況などを受診前に医療機関へ伝えるための書類です。症状欄で迷ったら、「いつから・どこが・どのように」を先に整理し、必要に応じて程度・頻度・変化を付け加えます。
病名や薬名を思い出せない場合は推測せず、お薬手帳や過去の資料を確認してください。分からない情報は医療スタッフへ確認し、実際とは異なる情報を書いて空欄を埋める必要はありません。
- 症状は「いつから・どこが・どのように」を整理する
- 程度や頻度、症状の変化が分かれば追加する
- 複数の症状は一番困っているものから書く
- 既往歴は病名・時期・現在の状態を整理する
- 薬名はお薬手帳などで確認し、推測して書かない
- 分からない項目は医療機関へ確認する
- 問診票を書いた後に体調が変わった場合は当日に伝える
受診前に問診票へ書く内容を整理しておけば、診察時に「何を伝えればよかったか思い出せない」という状況を減らせます。まずは確認できる事実を書き、書ききれない内容は診察時に補足しましょう。